第18話 2人で登校

 朝ごはんを食べ終えたあと、気づけば遅刻ぎりぎりの時間になっていた。僕は身体ともに疲労感を感じながらも、百合と並んで学校までの道を歩いている。


「あーあー頭いたいよ〜お家にかえりたいよ〜」


「急にどうしたんですか、頭おかしくなっちゃたんですか?熱はないんだから、頑張りましょうね煌星くん」


「なんで君が僕に熱がないなんて言えるんだ。ちゃんと僕の体温を測ったのか?決めつけるなんてよくないですよー」


「なんでって、そんなの見ればわかりますよ?当然じゃないですか」


「君は見ただけで人の体温がわかる特技をもっていたのか?それは知らなかった。すごいな」


「私褒められてます!?ありがとうございます。てれますね」


「………煽りが通用しない、だと?!」


「煌星くんの考えることなんてお見通しですよ。まあ、私。大人の女性なので(キリッ)」


「大人の女性は急に泣き出しだり、か弱い男子高校生を脅したりするんだな。それは知らなかった」


「私過去は振り返らない主義なんです。でもたまには、そんな大人な女性がいてもいいでしょう。私かわいいし!」


「お前過去は振り返らない主義なのか、そんなこと言い出したらこの物語が色々と破綻するが!?……いいのか?」


「私の代わりにきっと煌星くんが、たくさん振り返ってくれるでしょ☆」


「振り返らないと始まらないからな!!」


「さすがは過去に未練たらたらの男。衛宮煌星ですね」


「まあな!!ここでお話しを終わらせたくないしな!!このままだと破滅ルート一直線だろ」


「そうなったら、一緒に天国に行きましょうね♪」


「こわいよ、僕まだ死にたくないよ〜!だから何考えてるか分からない、満面の笑みでこっちを見るな。僕恐怖で震えちゃうよ」


「そこは喜んで一緒に心中してくれないんですね」


「まだこの世には未練があるからな」


「ほう、まあ冗談はこのくらいにしときますか」


 百合にしては珍しく追求してこない、なにか考え事をしているのだろうか。


「今のは冗談だったのか?割と本気そうだったぞ。気のせいだと思いたいが、獲物を仕留める目をしていた」


「私はいつでも煌星くんを仕留める準備満タンですよ!」


「……冗談だよな?」


「ご想像におまかせします♪」


「というかなんでこの僕が。きみと一緒に登校しなくちゃならないんだ」


「だって恋人ですよ?ラブラブなんですよ??そんな人達が同じ家から一緒に学校へいくなんて、当たり前じゃないですか」


「……あのなぁ。僕が心配することじゃないとは思うが、いいのか?」


「なにがですか?」


「僕と一緒にいるところを見られても、平気なのかと聞いているんだ」


「見られてなにか問題があるのでしょうか?」


 そう言い百合はほんとに訳が分からないという顔をして、こっちを見ている。

 自分で言うのはなんだが、僕は今まで登校してもほぼ毎日誰とも話さず帰宅するという。クラスの隅に固まっているいかにも陰キャという奴らよりも陰キャだ。嫌われてもいないが、その代わり影が薄すぎて誰にも覚えられていないタイプ。

百合は僕とは真逆で男女共に人気がある上に、男子とも女子とも話すし。友達も多い。

 そんなカーストをつけるなら最上位に位置している女と最下位の男が、仲良く同じ家から登校しているのを見られれば嫌でも噂になるだろう。


「ほら、百合は2年の中で男女とも人気があるだろ?そんな奴が僕みたいな陰キャといて。悪目立ちしないのかと思って」



「そんなの、とっくに目立ってるに決まってるじゃないですか」

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