第12話 昼休み終了5分前
「じゃあ、名残惜しいけど。戻りますね」
昼休み終了5分前。百合は今生の別れでもするかのように、僕にそう告げた。
「いや。隣の席だから」
「…えへへ、そうでした」
そう言い、百合は3秒ほどで着く距離にある自分の席へと戻る。
「今まで全く気づかなかったけど。煌星くん、こんなに近くにずっと座って居たんですね!」
百合はやや大袈裟に身振り手振りを交えて、人一人分程通路が作られている隣の席からそうわざとらしく話している。
「もう4ヶ月近く隣の席に座っているんだが。そこまで僕は空気薄いですか、そうですか」
「あ、もう〜!流石に冗談ですよ、隣が煌星くんなの私が気づいてないわけないじゃないですか。煌星くんが存在感激うすなのは。本当ですけど」
「うわぁ〜!!傷ついた。まあ知ってたけど」
そう、僕は元々存在感が薄いわけではない。目立ちたくないから存在感を操作しているんだ。
でもおかしいな??今日1日中クラス中の視線を僕が集めている気がする。特に男子のカーストトップの山寺率いるグループからの視線が刺さる。そして朝から僕に殺意を向けていた、四ノ宮からは今にも殺されそうな負のオーラを感じる。
山寺グループからは明らかにこちらを下に見ている視線をつけていて、今も僕の様子を遠目で見ながら。グループ5人ほどで談笑している。
僕は山寺のようなタイプは苦手だ、別人だと分かっていても中学のトラウマを思い出す。
「5限目の授業始めますよ〜皆さん席についてください〜♪」
どうやら5限目はうちの担任が担当している英語のようだ。百合は担任が入って来る前にはいつもどうり教科書類は机に出ており、いつもどうりにお嬢様のような雰囲気を醸し出して優雅に座っていた。
これを転校してきた日から毎日欠かさず続けているのだから、素直に感心する。
僕と話していた百合は見る影もなく、すっかり優等生に戻っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます