第11話 昼休み

「やっぱり、あの先生お前にだけ甘くないか?」


「それは、普段の行いの差ですよ。衛宮くん」


一限目を2人揃って30分遅刻した僕達は、今度は僕の机に向かい合わせで昼食を囲んでいた。


「ふん、ちょっと猫被ったくらいでちやほやされるなんて。女は得だよな〜!」


「そんな事を言っているから。衛宮くんは嫌われるんですよ」


「うるさい、箸が止まってるぞ」


「そうでした、千絵さんが作ったお弁当に失礼ですね。もぐもぐ」


「はあ〜本当にいつ2人分作ってたんだ母、、」


「んー。今までもたまに頂いてましたよ」


「聞いてないんだが!」


「ところで衛宮くん。なんで名前で呼んでくれないんですか」


「唐突になんだ……、名前で呼ばなきゃいけない決まりはない」


「私はちゃんと衛宮くんで呼んであげてるのに、なんでくんは名前で呼んでくれないんですか!」


「その、それは……、だな」


正直名前で呼ぶのが気恥しいだけである。

長年ぼっち生活を極めていただけあって、男の友達すらいなかった僕が女の子を名前で呼ぶ機会なんてある訳がない。


「さては……恥ずかしいんですよね!!私のことを名前で呼ぼうとするだけで、緊張して動悸が起こり、恥ずかしくてとても呼べないと!」


「……それはそれでなんかムカつきますね。まるで、私の名前が恥ずかしいみたいじゃないですか」


「とりあえず、落ち着け」


「私は落ち着いてます、!」


「うそつけ。お前この状況見えてるか?」


「何がですか?」


「今までのお前が築きあげた、優等生なお嬢様なイメージはいいのか?見られてるぞ」


「…あぁ、そんなことですか」


朝からずっと刺すような視線を浴びていたから、僕も感覚が鈍っていたのかもしれない。


「いや、お前。そんなことって………ていうかいつも一緒にお昼たべてた四ノ宮はいいのか?」


「彩花にはちゃんと話を通してるので大丈夫です☆そもそも、私が周りからどう思われるか気にしていたら。今教室で煌星くんと一緒にお昼なんて食べていません」


「…たしかにそうだな」


今日は朝から四ノ宮からの殺意を向けられている気がするが、きっと気のせいだと信じよう。うん。


「ちょと性格が変わったからって離れるような人なんて、どう思われても気にしませんよ」


誰に向けたのか。

冷たくも意志のこもった百合その一言で、今まで聞き耳を立ててコソコソと様子を伺っていたクラスメイトは短くも長く感じる沈黙を経て。普段の騒がしさを取り戻していた。


「……きみのそういうとこ。わりと嫌いじゃない」


「そういうとこが好きできみを愛してるって?ありがとうございます♡」


「そこまでは言っていない!!」

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