第8話 登校イベント①
「あ、やっと来ましたね!」
「今日は朝ごはん食べてる時間ないわね〜冷蔵庫にお父さんが買い置きしてる栄養ゼリーがあるからそれ持っていきなさい。」
思ったより準備に時間が掛かってしまった、僕は言われた通りに冷蔵庫から栄養ゼリーを持ち玄関へと急ぐ。
「突然おじゃましてすみません!お世話になりました。」
「気を使わなくていいのよ。こうやって二人並んでいるとなんだか百合ちゃんがうちの娘になったみたいで嬉しいわー!仲良く行ってらっしゃい!」
「ふふ、嬉しいです。行ってきます!」
「行ってくる」
少し行儀が悪いが僕は栄養ゼリーを飲みながら、靴を履き外に出た。
今の時間は8時10分、30分までには教室についていないと遅刻になる。
幸い僕の家から学校までは普通に歩いで行くと20分で着くから、つまり少し急いで行けばまだ間に合う。
「少し早歩きで行くぞ」
「わかりました!」
百合はすごく機嫌が良さそうだった、軽い足取りで鼻歌を口ずさみ歩いている。
「うれしいなぁ〜!煌星くんと一緒に学校行ける日が来ると思わなかった。」
あぁ……くそ、かわいいなぁー!!!百合は見た目も性格も随分変わってしまったが、まるで昔に戻ったように無邪気に微笑まれるとどうにも困る。
「………僕も嬉しいよ」
「あ〜れ〜?素直だね、私と一緒に登校出来るのがそんなに嬉しいと」
百合は先程と打って変わってニマニマした表情でこっちを覗き見ている。
分かってた……分かってはいたんだ……。
「独り言に反応するな。」
「えぇー?今のが独り言とかちょと無理がありません?」
「うるさい。」
「あ!照れた、!どっちにしろ嬉しいと煌星くんも思ってくれているみたいで嬉しいです♪」
「照れてない!別に嬉しくない、!」
「嘘ついてもバレバレですよ〜!煌星くん今も昔も照れるとすーぐ耳が赤くなる、分かりやす過ぎて心配になります。」
「余計なお世話だー!」
そうこうしているうちに時間はあっという間過ぎて行く、あと10分で遅刻になる。とてもやばい。
「急ぐぞ」
「了解です!せっかくなので教室にどっちが先に着くか競走しましょう、勝った方は一つお願いごとを相手に聞いてもらえるっということで!」
僕が返事をする前に、百合は瞬く間に走っていった。
昔の彼女は運動が苦手だったはずだが成長するにつれ運動も出来るようになったのだろうか?
体育の授業は男女別だから噂でしか聞いたことがなかったが、一歩出遅れた状態で全力疾走しても全く追いつく気配がない所か百合はどんどん見えなくなっていく。
……その時点で僕は負けを悟った。
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