第7話 目覚め
それはある日のこと。お日様がぽかぽかしているいい天気に公園のベンチで寄り添い、互いに手を重ね合う男女が二人。
『またこうして二人で過ごせる日が来るなんて、私幸せです。』
『あぁ、僕もまたこうして百合と一緒にこの公園で過ごせるとは思わなかった』
『ふふ、あの頃はお互いに意地を張り合っててなかなか素直になれなかったよね。』
『ほんとに大変だった。こっちが何回お前に告白させられたと思うんだ』
『そんなに言うことかな〜?というかさせられたって酷くない?!本心じゃないってこと?』
『本心から好きだよ。』
『えへへ、私も大好き』
そういえばあの頃の百合は僕に好きだという言葉だけは決して言わなかった、そう考えるとお互いに変わったんだと実感する。
僕は彼女を抱き寄せた、彼女の長いまつ毛を伏せ互いの吐息が唇びるをかすめる。唇に柔らかな感触が訪れ―――――――
「フゥ――――――――」
「?!?!?!」
自分のものだとは思えない声が出た、体に決して男ではない重さと柔らかい感触が乗っかっている。そしてこちらを見通すようなからかうような青い瞳が目の前にある。
「って近いよ!!なんで僕の体に乗っかってるの?!女っていう自覚ない??…いやそもそもどうしてここにいる!?」
「だって煌星くんなかなか起きないんだもん……。どうやって起こしたら起きるかなって色々試してたんです☆」
おかしい……僕は寝起きはたいして悪くないはずだ。やはり昨日の疲れが残っていたのかもしれない。
「とりあえず動けないからそろそろ僕の体から退けてくれませんか……」
「むぅ……わかりました」
「で、改めて聞くけどどうして朝から僕の部屋に居るんだ?どうやって入った?」
そうこいつ、百合は昨日晩ご飯を食べた後普通に家に帰ったはずだ。それがどうして朝から僕の部屋にいる。
「え?そんなの一緒に学校に行くために来た以外にあります?普通にお母様に部屋に上げて貰いました♡」
「いや、いつそんな約束をした?!母さんもなんで普通に家にあげてんだ……」
「友達なんだから一緒に学校行こうよ!!それとも……私と一緒に居るのそんなに、嫌なの?」
百合はどこか寂しそうな顔をしていた、友達になると言ったのは僕だったな……まあ一緒に学校へ行くのは友達の範囲内だろう。約束は守らないとな。
「はぁ………いいよ一緒に行こう。とりあえず着替えるから部屋から出て行ってくれないか?」
「やったー!リビングで待ってるね!」
そう言いふと時計を見ると時間はもうすぐ8時、まだまだ間に合う時間だがいつもより30分遅い、僕はいつ目覚まし時計を止めたんだろうか……。
平凡で変わらない毎日を送っていた、僕にとって昨日の出来事は信じられないことばかりだった。
……どうも彼女と一緒にいると調子が狂う。
部屋から一歩も出たくないレベルで疲れたけどとりあえず出る準備をしよう。
顔を洗い着替える間、僕の脳内から今朝見た夢の内容は綺麗に消えていた。
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