第5話 下校イベント②
「そろそろ僕の住んでるマンション、着くんだけど……」
流石に遅い時間に女の子を一人夜道を歩かせるつもりはなかった。
だから「私こっちの方面なので」と百合が言うのを待って「いや送るよ」とかっこよく決める予定だったんだがーーー
「え?言ってなかったっけー?」
「……何も聞いていませんけども」
「なんと!!私、煌星くんと同じマンションに住んでいます!こんな美少女と家まで一緒なんてお得ですね。」
「いや、そんな通販番組みたいなノリで言われてもな……こんなご都合主義あるわけが、ないと……信じたい。」
「そーれーがーあるんですよねー!丁度このマンション、私が日本にくる3ヶ月くらい前に丁度空いたみたいで直ぐに取り押さえました☆」
……何この漫画やアニメでよくあるラブコメのテンプレート的設定。
「どこでそんな情報掴んだんだよ……」
「煌星くんのお母さまから」
「は?」
「ほんとに煌星くんのお母さんにはお世話になりました!うちの両親来れないから家借りる時保証人になってもらったり、今でも心配して時々美味しいご飯を届けてくれてとてもありがたいです」
「どうして僕は、何も聞かされてないんだー!!」
思わず母不在なのに全力でツッコんでしまった………。
「まあ、黙っててくださいって私が頼んだからなんですけどね」
「あぁ…なるほどな」
きっと僕があの時彼女のことを知らないフリををしてしまったから、余計な気を使わせてしまったのだろう。
話していたらあっという間にマンションのロビーまで着いていた。そのまま一緒のエレベーターに乗り僕はいつもどおりに自分が住んでいる5階のボタンを押す。
「何階だ?」
「あ、えーと7階です」
チラッと画面が見えたが彼女はさっきからスマホで誰かにメッセージを返しているようだった。字を打ちながら何やら少しにやけている。
「許可がおりました」
「ん?」
百合はドヤ顔でさっきまで会話してただろうLINE画面を見せた。そこには――――
《百合》仲直り作戦大成功です\(^^)/
《千絵さん》おめでたい!!!美味しいお夕飯作って待ってるわね。
《百合》それはお家におじゃましてもいいと言うことですか?!
《千絵さん》もちろんよ!(つ`・ω・´)っオイデ
《百合》荷物家に置いてきたらおじゃましますね!
《千絵さん》りょーかい(クマが敬礼している可愛らしいスタンプ)
「っていうわけです!じゃあまた」
エレベーターはとっくに5階に着いていた
友達に送るような気軽さでやり取りされていたメッセージ。そう、千絵は僕の母の名前だ。
(………もう深く考えるのはやめよう。)
「あぁ、、また」
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