第2話 一緒に帰りませんか?
「……ごめんなさいっ!!間違えてしまいました。」
僕はどう返して来るかとひやひやしていたが、急に我に返ったのか、彼女はすぐにそう言って静かに席についた。
あの後、僕は多少クラスメイトからどういう関係か聞かれるか?とか彼女からきっとまた話しかけてくれるんじゃないかと身構えていたが、とくに何も無く僕はクラスの空気と化したまま。
季節は6月から9月に変わろうとしていた。
「では小テストを返しますね〜♪」
「みんなよく頑張りました〜。なんと!今回満点だったのはクラスで1人だけです♪」
………またか。
ちなみに彼女はあっという間にクラスに馴染み、体育の授業ではエース級の活躍をし、更には初の期末テストで難なく学年1位の座にその名前をつらねていた。
まあ頭良かったもんな……。
記憶に微かに残っている彼女の部屋は本で埋まっていた、天文学辞典やびっしり活字で埋まっている小説。明らかに小学生が読んでわかる内容じゃなかったことだけはわかる。
「百合また満点とったでしょー?」
「えへへ……ばれた?」
「そりゃーわかるよ、しかも今日また男が振られた〜って言って泣いてたわよ。これで何人目?」
「9人目かな?」
「もったいない〜まあまあ顔いいのも混じってたんだし、試しに誰かと付き合って見ればいいのに。」
「だって、誰かと付き合っちゃえば時間取られて彩花と一緒にいる時間が減っちゃうでしょ?」
「もう〜かわいんだから♡。いっそ私にしちゃう?」
彼女と仲良さげに会話をくり広げているのは綺麗な黒髪ボブのクラスメイト四ノ宮彩花、転校初日に最初は遠巻きに見られてた彼女に1番に声を掛け。それ以来ほとんど一緒にいる。
……ちょと羨ましい、なんて考えていたら彼女と目があった。いつの間にか四ノ宮さんと別れこっちに向かって来ている。
「衛宮くん!!いきなりごめんね、今日どうしても伝えたいことがあるの。今日、一緒に帰ってくれませんか?」
彼女、いや湊月さんは顔を赤らめながら。まるでこれから告白するのかのような雰囲気を漂わせていた。……とても断れる雰囲気じゃない。
(べ、別に一緒に帰りたいとかじゃないから!!告白されたらどうしようとか、考えてないし?!?)
「分かりました。」
即答だった。
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