第31話歌詞

光は、作詞家としても活躍するようになった。


一郎が、一歳になり、光は、未来に一郎を任せて中学校に戻った。


授業中以外は、保健室か屋上にいた。


光は、廃人のようになっていた。


話す、聞く、笑顔、全てが作り物のようで誰も寄せ付けなかった。


高校は、公立高校を選択して受験して合格した。高校でも光は、一人ぼっちだった。


しかし、次郎に似た男子生徒と出逢ってしまった。


神谷健…。


いつも、屋上に来て焼きそばパンを食べて光には目も向けない。


入学当時から、光は、噂の的だった。

容姿端麗、作家。


それだけで毎日、手紙が机の中。下駄箱に入っていた。


毎日、健の横顔を見てる内に光は、久しぶりにドキドキするようになった。


「あのさ、毎日、焼きそばパンで飽きないの?」


と光は、ボケッとしている健に聞いた。


「カレー、ラーメン、焼きそば。毎日食べてるけど飽きない。」


と光を見ないで健は答えた。


「そうなんだ。わたし、塩ラーメンが好き。」


「…。」


「じゃあ、今日、塩ラーメン食べに行くか?」


「うん、行こう。」


健は、放課後、屋上でと言って寝てしまった。


放課後ー。


猫背気味の健は光を見ると立ち上がった。


二人で校門を抜けて自転車をこいで学校を後にした。


自転車を健が停めるとここと言った。

はっきり言ってボロいラーメン屋だった。


光は、ボロいラーメン屋でも良かった。


店内に入るとらっしゃい!


という元気な声が聞こえた。


「塩ラーメン二つ。」


と言って健は光を見つめた。


「何?」


光は、ドキドキした。


「美味しい。」


光は、思わず呟いた。


「チャーハンも美味しい。」


「じゃあ、チャーハンも。」


健の提案に光は乗った。


「美味しい!」


光は、叫んだ。


「健、珍しいな、お前が友達連れてくるなんて。」


厨房から声がした。


「父さん、知り合いだよ。」


「え?ここってあなたの家?」


「そうだけど。」


健は、眠たそうに答えた。


「健、可愛い女の子連れて来たな。」


「…。」


健は、何も答えずにチャーハンを食べている。


店の前で二人は黙ったままだった。


「ありがとう。また、屋上来る?」


光は健に聞いた。


「うん。」


「じゃあ、またね。」


光は自転車に乗って走り始めた。


何だろう?このドキドキは?


自宅に帰ると一郎と未来が待っていた。


「ごめん、ご飯食べて来た。」


「そう。」


未来は、グチグチ言わない。


光は、健の話を未来にした。


「確かに、次郎に似てるわね。あなた、久しぶりに笑ったね。」


わたし、笑えてるんだ。次郎に申し訳ない気になった。


光は、健の隣にいると次郎がいるみたいで心地よかった。


しかし、健には彼女がいた。


「どんな彼女?」

「キャバクラで働いてる。」


健は、つまらなそうに話した。


屋上は、今日も穏やかな空気がながれている。

光は、ガッカリした。


廊下を歩いているといきなり女子の集団に囲まれた。


「健に、何話しかけてるの?」


怒気を含んだ言葉で威圧された。


光は、黙っていた。


「健には、二度と近づかない事!」


と言って集団は去って行った。


健は、モテるんだなと思いながら怖いとも感じた。


五月…少し蒸し暑くなって来た。


相変わらず光は健の隣にいた。


「ねぇ?健はさ、進路どうするの?」

「ラーメン屋継ぐ。」


あまりに簡潔で光は次の言葉が見つからなかった。


「光は?」


健は、かったるそうに聞いてきた。


「分からない。」


光は、屋上から見える雲の流れを見て答えた。


光は、小説も歌詞も書かなくなった。


書く気力が無くなったのだ。


光は、自殺を考えるようになった。


次郎と同じ所に行ける気がした。


そんな時に健が彼女と別れた。


自然と光と健は付き合うようになった。


健の家のラーメン屋のバイトを光は始めた。


客が、倍以上に増えた。

光見たさに来る客が多かった。


健も手伝うようになった。


【透明なクリスタルWORLD】


学校で浮いた存在。


そんな自分‥。


でも心には強い意志がある。

飛ばしてやれ!こそこそ話!


噂、ラブレター、好きなんていらない。


欲しいのは浮遊感、空を飛びたい。

どんな明日よりも今日の出来事。


寂しいなんてカテゴリーはこの世界では無視される。


でもでも、寂しいんだ。


死にたくなるぐらい寂しいんだ。


どこまでも透明なクリスタルWORLD。


平気な顔してる君の心はざわざわ

好きな人を奪われて何で笑顔でいなきゃいけないの?


君の横顔に恋をしてた。

伝えたいけど伝えたら嫌な顔されてまた無視される。


浮遊感が欲しい飛んだら君もわたしを好きになってくれる?


どこまても冷たいクリスタルWORLD。


信じてみよう自分を‥…。


どこまても透明なクリスタルWORLD。

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