第27話中学一年生
中学一年生、上野光、職業小説家。
光は、物事を冷静に判断出来る少女だった。
私立中学進学を止めた訳は、単純に放っていけない存在がいたからだ。
高良亜星。中学一年生。粗暴で、自信家、しかし本当は繊細な心の持ち主。
小学六年の二月、亜星は雨の中、一人で学校の屋上にいた。
それを見かけた光は、亜星に傘を渡した。
「上野…。」
「どうしたの?」
光は真っ直ぐな瞳で亜星を見つめていた。
「母さんが、若い男を家に連れ込んでるんだ。だから帰れない。」
「お父さんは?」
「去年、蒸発したよ。どこにいるかも分からない。」
亜星は雨に濡れてびしょびしょだった。
「わたしの本当のお母さんも蒸発したんだ。」
「マジかよ?」
「マジ。」
光は、初めて人に自分の生い立ちを話した。
亜星は、泣き始めた。
「優しいお父さんだったのに…。」
光は、傘を放り投げて亜星を抱きしめた。
こんな出来事もあり、二人は放課後、屋上で会う事が多くなった。
「え?私立に行かないの?」
「うん。」
「名門だろ?」
「合格だけが目標だったから良いの。亜星と同じ市立の中学校に行く。」
「お前、おかしな女だな。」
光は、空を見つめて
「あー勉強楽しかった!」
と叫んだ。
亜星は、吹き出すように笑った。
「俺、中学から野球始めようと思う。」
「ふーん。」
「ふーんってそこは兄ちゃんが、プロ野球選手になったんだから助言くれよ。」
「とりあえず、その頭、丸刈りにしたら。」
亜星はため息をついた。
中学に光は入学して小説を書き始めた。
担当編集者の純は喜んでいた。
『ボールに恋して丸ボーズ。』という小説を書いた。
内容は、野球部に入部するために長髪の少年が丸ボーズにするかどうか葛藤する青春小説だった。
小説のモデルはもちろん、亜星だった。
亜星は、実際、丸ボーズする事に苦悩していた。
「野球が好きなら丸ボーズにしたら?」
中学校でも光と亜星は屋上で会っていた。
「俺、野球大好きだけど、この髪型も気に入ってるんだよな。」
「分かる気はするけど。」
光と、亜星は仰向けになって寝っ転がって夕焼け空を見ていた。
「お前さ、モテるんだな。」
「モテる?」
「俺のクラスでもお前の話題で騒いでる奴等がいたぞ。」
「でも?」
「仮入部の時に、先輩達がお前の話ししてた。」
ふーんと、興味なさげに光は答えた。
「亜星も、モテるよ。クラスの女の子達が騒いでた。ウザいよね。好きとかイケメンとか。」
「ああ…。そうだな。」
次の日、亜星は、サッカー部に入部した。
誰もいない教室から光は亜星のサッカーしてる姿を見て少しホッとした。
「ノンフィクションにならなくて良かった。」
と呟いた。
光は、色々な部活に誘われたがピンと来なかった。
そこで、特別に助っ人として試合の時だけ呼ばれてプレーする特待生として帰宅部になった。
「お前、帰宅部の特待生って何だよ?」
昼休み屋上で亜星が光の横顔を見て聞いてきた。
「先生が、そうしろって言ったから。」
と光は素っ気なく答えた。
「お前ってやっぱ変わってるな…。」
亜星は、クスっと笑って言った。
光の勉強の成績は良かった。
部活もしていないので必然的に勉強する時間がある。
しかし、光は勉強より読書に時間を費やした。
勉強は、授業中に暗記していたから勉強する必要はなかった。
未来が書いた本は全部読んだ。
光は、本を読む事に魅了されていた。
そのため図書委員になって本を読みあさった。
「おい、お前、目の下にクマが出来てるぞ。」
と亜星に指摘された。
「そう。」
光は、亜星といる時も本を読んでいる。
亜星はそんな光が心配だった。
どこか、遠くの世界に光が行ってしまいそうで。
「お前、高校どこ行くんだよ?」
「先生が決めた所。」
光は上の空で答えた。
「じゃあ、進学校だな。」
「あんたは?」
光が珍しく本から目を離して亜星に聞いた。
「俺の成績じゃあ、進学校は無理だな。」
「ふーん、じゃあ勉強教えてあげようか?」
「マジかよ?」
光は、本を放り投げてマジと答えた。
光は、ハマれるものを貪欲に探していた。
それから、亜星が部活を終えると光の家に行って勉強する事になった。
光の勉強の教え方は上手く亜星の成績はグンと上がった。
勉強中に亜星は光に聞いた。
「お前、セックスに興味ない?」
「ある。」
即答で返事が返ってきた。
「じゃあさ、俺が…。」
「亜星とならしても良いよ。」
亜星は、光を押し倒した。
キスをして光の制服を脱がして自分も裸になってセックスを始めた。
光は意外と敏感で嬌声を上げた。
光は、亜星に甘えた。
「もっと虐めて。」
一つになった瞬間、光は心地いい痛みを感じた。
初めてにして二人は三回、セックスを繰り返した。
セックスを終えた後、光は何もなかったように亜星に勉強を教え始めた。
亜星は物足りなさを感じた。
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