第6話心の変化
未来は、残業を終えてアパートに帰って来た。
アパートの部屋には理恵がテーブルの上にティッシュを山にして待っていた。
理恵の目と鼻は真っ赤になっていた。
「ただいま、ずっと泣いてたの?」
「…うん。」
「翼に電話するから。」
理恵は、少し笑った。
【翼、どうしたの?】
【どうしたのって未来から電話かけてきたんだろ。】
【理恵とどうしたのって聞いてるの?】
【…その話か…理恵から聞いただろ?】
【ちょっと一方的過ぎない?もっと二人で話し合ってよ。】
【好きな人が出来たんだ。だから、理恵とは別れる。それしか話す事はない。】
【好きな人?】
【あぁ…。】
理恵は、泣き始めた。
【理恵と話して。】
とスマホを理恵に渡した。
【翼…。】
それからずっと理恵は頷いてるだけだった。
この夜、二人は別れた。
理恵は、朝になると帰っていた。
恋愛って楽しいだけじゃないないんだな…。
仲良しな二人を学生時代から見てるから未来には信じられなかった。
スマホを片手に何となく電話履歴を見ていた。
そうすると春馬から電話がきた。
【もしもし、お疲れ様です。】
【松本さん、今日、取材のために俺とデートしてください!】
【良いですよ。先生。】
ポッカリ空いた隙間に春馬が静かに入って来てくれた。
春馬の住む駅で待ち合わせする事になった。
久しぶりにお洒落をして未来は出かけた。
春馬は、いつもだがスーツにネクタイの制服姿だった。
春馬は未来を見つけると嬉しそうに駆け寄って来た。
「手を繋いでも良いですか?」
少し春馬はおろおろしながら未来に聞いてきた。
「良いですよ。」
未来は、笑顔で答えた。
春馬の細くて白い手は思った以上に冷たかった。
「先生、わたしとなんかデートしてて良いですか?」
「はい。今回のヒロインは松本さんなんです。」
「小説の中ですか?」
「そうです。一生懸命なのに癒し系。」
わたしは、癒し系なのかと思い未来は少し嬉しかった。
大型のショッピングモールにある映画館の前で春馬は、立ち止まった。
「映画観ませんか?」
「良いですよ。」
映画は、恋愛だった。
主人公のヒロインが記憶喪失で最後は恋人の事まで忘れてしまうという内容だった。
春馬は静かに感動したのか、泣いていた。
映画見終わった後、フードコートで二人でうどんを食べた。
「先生、泣いてましたね?」
「…感動しました…。」
「あの映画、柏原竜先生の原作ですよ。」
「そうですね。だから観たいと思いました。」
ライバルと称されてる二人。
それでも、相手の映画を観るなんて強い心をもってるなと未来は感じた。
二人でブラブラ歩いているとレストランで礼二が家族とご飯を食べてるところを目撃した。
礼二が、こっちを見た瞬間、未来は春馬と繋いでいた手を振り払った。
心臓が急激に冷却された。
礼二は、何もなかったように家族に視線を戻した。
「先生、わたし帰ります。」
急に自分がやってる事が恥ずかしくなった。
呆然とする春馬を置いて未来は駅に向かった。
電車の中で何故か涙が止まらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます