第5話天才美少年作家

未来は、編集長に呼び出された。


「田中春馬先生のご指名だ。」


「あの春馬先生からですか?」


編集長は、笑顔で頷いた。



田中春馬は、恋愛小説作家でまだ高校二年生である。



「分かりました。」



編集長の命令は絶対だ。



春馬とは、出版社の地下にある喫茶店で打ち合わせをした。


「松本さんは、あの十五歳の相原竜の担当もしてるんですよね?」


春馬は、熱いコーヒーを飲みながら未来に訊ねてきた。


「そうですけど。」


「いや、ちょっと気になって聞いただけです。」


と春馬は言って次回作の話をし始めた。


春馬は、プロットを話始めた。


さすがだと未来は聞いていて思った。


「僕、松本さんに担当になってもらって嬉しいです。」


「そういえば、聞いても良いですか?先生は何でわたしを指名してくれたんですか?」



「それは初恋の人に松本さんが似てるからです。」


少しお恥ずかしそうに春馬ははっきり答えた。



「そうなんですか、わたしに似てるんですか。」


「はい!そっくりなんです。僕は学校では居場所がないんです。天才なんて呼ばれてますけどいつも孤独なんです。」


少しの沈黙があった。


「わたしも先生に指名されて嬉しいです。二人で最高の恋愛小説を生み出しましょう。」


と未来は力強く言った。


「はい!」


と春馬は嬉しそうに答えた。


「どうだ?」


と打ち合わせを終えてオフィスに帰って来た未来に礼二が聞いた。


未来は少し恥ずかしそうに


「頑張ります!」


と答えた。



「そうか。」


とだけ言って礼二は自分の席に座って仕事を始めた。


隼は、仕事を休んでいた。


未来の、頭の中は礼二の事でいっぱいになった。


何故、こんなに礼二の事を考えてしまうんだろう?


いけない、礼二は妻子がある身なのだ。


密かに想っていようと未来は決めた。

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