蚱の花
わたしはクラゲ。
クラゲはよるがだいすきだった。
よるになると、つきがわたしをてらすので、わたしもひかることができる。だからわたしはよるがすきだな。
クラゲはつきがだいすきだった。
とくにしょしゅんのうづきにみえる、ふけまちづきとかげんのつきがだいすき。うつりかわるしゅんかんの、ひょうじょうがすきなんだよね。
クラゲはうみがすきだった。
うみはわたしのうまれたばしょで、わたしのいえだから。かがみみたいなみなもにうつったうみがだいすきで、わたしはつきにいきたくて、いつまでもおよいでいた。でも、つきにはいけなかったよ。
クラゲはさかながすきだった。
わたしのかぞくはみんな、さかながすきだったから。ゆっくりとながされるようにおよぐしかないわたしたちとちがって、あのこたちはみんな、じぶんのからだでながれにさからっていきているから、うみをおよいでいるから。すこし、うらやましかったんだ。
クラゲはタコがだいすきだった。
タコはわたしのともだちだったから、よくいっしょにおよいでいた。わたしはいつものんびりしていて、さきのことなんてなにもかんがえなかったけれど、タコはまじめでわたしのせわをしてくれるんだ。だからわたしは、タコがしあわせならそれでわたしもしあわせなんだとおもった。
クラゲはほしがすきだった。
だって、あしをひろげたタコとほしはそっくりなんだもん。タコは、ほしはまるいからぜんぜんにてないっていうんだけど、わたしはやっぱりにてるとおもう。だからわたしはほしがすき。
クラゲはらんのはながだいすきだった。
だって、らんのはなはほしにそっくりなんだから。でも、タコはまんねんろうのほうがすきなんだって、なんでかな。おもしろいよね。
クラゲはにいちゃんがだいすきだった。
ちがううみでうまれたから、すがたをみたことさえないし、もうあうこともできないけれど、げんきにしてるといいな。おなじようにわたしのことをおもってくれているなら、うれしいな。
クラゲはせかいがだいすきだった。
でも、せかいはクラゲがきらいみたい。
だからわたし、もういかなくちゃ。
わたしのやくめは、ここまでみたいだからさ。
タコはさびしがるかな、きっとさびしがるだろうな。だから、おねがい、にいちゃんさ、わたしのかわりにタコをたすけてあげて。それで、わたしにはできなかったこと、してあげてほしいな。
ふふ、じゃあね、ばいばい。
あと、ありがと。
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