2#ターフに侵入してきた風船

 「何でここに風船が・・・?!」


 馬群から離されてダントツのシンガリを駆けるスプライトの目の前に、どこから迷いこんだか、侵入してきた黄色い風船がフワフワと浮いているのを見て、はっと気が付いた。


 「風船・・・」


 スプライトは、目の前を通り抜けていく風船によそ見した。


 「こらっスプライト!!レース中に『ソラ』つかうな!!」


 鞍上の騎手が鞭を振るって、風船に気をもられて蛇行するスプライトに注意した。


 その時だった。



 ぴゅうううううーーーーーー!!



 いきなり突風が吹いた。



 ふうわり・・・



 黄色い風船が突風に煽られて、既に突き離された他馬の馬群の方へ飛ばされて行ったのだ。


 「風船!!まってぇーーーーーー!!風船!!」


 スプライトは急にペースをあげて、コースの向かって飛んでいく風船を追いかけて駆けていった。




  ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!



 「うわっ!!おい!!突然!!急にスピードあげて!!」


 スプライトがいきなりペースをあげられて、鞍上の騎手は思わず落馬しそうになって、手綱を必死に掴んだ。



  ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!



 「風船!!風船!!まってぇーーーーーー!!」



 飛んでいく黄色い風船は、他馬の馬群方へ方へと、吸い込まれるように向かっていった。



 「うわっ!!」


 「な、なんなんだ?!」



 遥か後方から、弾丸のように突っ込んでくるスプライトを見て他馬の騎手達は動揺した。



 ふうわり・・・



 「まってぇーーーーーー!!風船!!わたし風船欲しいぃぃぃぃーー!!」


 スプライトは既に他馬に追い付いて、次々とごぼう抜きしていくのを気もくれずに、頭には黄色い風船を追いかける事で必死になっていた。


 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!



 「風船ーーーー!!風船ーーーー!!まってよぉーーー!!」



 実はスプライトにとって、風船は大事な思い入れがあった。



 ・・・・・・

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