1章 6.『■』して『■■』は突然に。そして『■■』は俺へ怒る
歴史を動かすことを行おうとする2人の後継者。どちらも賢者の後継者、エンザエム家。2人のうち、1人は世界に愛され、後継者の中でトップと呼ばれる騎士。彼はダメだと理解できた。
「俺の正義は可愛いだ」
「私は正義感で動く。歴史を動かすことで止まっていた時は動き、この世界の歴史も動く。歴史を動かすことで魔人は消え去っていくのさ。魔王を復活させたことは反省でしかない」
「じゃあ、なんで―――!」
復活させたのか、と問いかけようとするが彼はすぐに答えを出した。
「魔王を復活することで魔人は1つに固まり、1つの軍として動き出す。1つに固まれば私が一振りで消せるからだ」
こいつはおかしい。一振りで魔人を倒そうと言っているのだ、いや、できると言っている。最強の騎士という名にふさわしい最恐の存在。
恐怖で問いかけれない俺を放って話が進み出した。
「改めて質問をしよう。君たちは誰だ」
「―――っ。俺はロクだ」
歯を食いしばって俺は答え、アンカやガルも続いて自己紹介を済ます。そして、アンカが本題の話を切り出す。
「私たちは強くなりに来たんです。何か方法を教えてください」
「もう強いよね。まだ亜人の男はいいけどあの男は弱すぎるよ。呆れる。勝手に自分を責めて自分でボロボロになるって意味わかんない」
ため息をつく賢者に「いや」と騎士は否定し、
「自分を責め、また強くなろうとすることは悪くない。むしろ良い。私のように強くなれると私は思う」
目を瞑(つむ)りながら小さくうなずく。アンカやガル以外にも励ましてくれる人がいるんだ、と思うと嬉しかった。一旦深呼吸し心を落ち着かせ、騎士に問いかける。
「俺を強くしてくれねえか?なんだかお前に頼りたくなってさ」
「ニヒルは―――!」
「私でよければ稽古をつけよう、と言いたいのだが。『箱』を見たことないか?」
真剣な表情で聞く騎士。その箱がなんなのかはすぐに察する。俺がこの世界に来れた『物』であり現実では当たり前のようにあるもの。
「『段ボール』のことか?『俺がここに来れた』のはこの―――」」
瞬間、空気が変化した――否、空間が歪んだ。俺だけが暗闇の世界に引きずり込まれていくのを感じる。体は動いていない、ただ精神だけが引きずり込まれていく。
「―――ぁ」
今、起こっている出来事に驚き、息が漏れ出す。背筋が凍り、体は、心は、魂は凍っていっている。
「―――ぁ……ぁ…!」
言葉を発そうとしない口、震える体、危機を知らせる脳。―――ひび割れていく『手』。ひび割れていく『足』。ひび割れていく『体』。ひび割れていく『意識』。ひび割れていく『心臓』。
―――砕け散る『魂』―――
「ぁ…ぁあああああああああああああああああああ!」
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い、こわ……い…ぃ…痛い痛い痛い痛い!熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!
叫び、叫び、叫び、叫び、叫び、叫ぶ。無で暗闇の世界でただ一人だけ、叫び、苦しむ。
「ぁぁぁぁ……ぁ」
叫ぶ声もだんだんと弱まり、俺の意識が遠ざかっていく。
―――『■』を味わえ―――
赤い手が、俺に近づく。意識が無くなる直前、心臓にある血液を全て使い声を出す。
「君を……お前を…………守る」
―――『■』は突然にして起こり、『■■』は怒った。俺は『■に■■』の加護と『精霊の加護』を授かった。
*
「炎魔法も少しの時間しか持ちません……魔力もこの洞窟は薄くて………ロクさん?」
「―――ぁ」
声が聞こえる。落ち着ける声。
「リーダー!どうしたんだ!?」
「―――」
声が聞こえる。たくましく、頼りになる声。
「大丈夫ですか!?」
「―――ぁ」
意識が、脳が、魂が今の状況に困惑している。この洞窟になぜいるのか、もう楽園にたどり着いたのでは。
―――俺は『■』したのでは。
めまい、頭痛、吐き気。俺は、洞窟の中で倒れてしまった。
「人の精神に入るのは好きではないね」
「―――」
頭の中で声が響く。精神の『■■』へと入った。そこには1人の男が立っている。見たことあるが会ったことはない。ただ、会っていないのに会っているという矛盾が発生していた。
「しゃべれなくなるほど苦痛だった、とでも言いたいようだね」
「―――ぁ?」
「すまない、誰かは……君には分かるかな。私の名前は天の騎士、ニヒル・グラディウス・エンザエム。『■■』に愛された唯一の騎士であり、賢者に愛された唯一の後継者。君の存在は私と正反対だ。つまり、君は『■■』に嫌われた唯一の人間であり、賢者に嫌われた唯一の異人」
「―――」
騎士の言っていることが理解できない。なぜ俺は『■■』に嫌われている、なぜ賢者にも嫌われているんだ。なぜ、なぜ、なぜ―――
「なぜかは私にも理解ができない。ただ一つ言えることがある。君の存在はこの『■■』―――『世界』に拒絶されている存在。ただ、君はこの世界に存在できている。これもまたすぐに理解ができたが――出てこい!精霊」
大声で『精霊』を呼ぶ。俺の意識の中になぜ『精霊』がいるのかとまた疑問が生まれた、が、なぜか答えがすぐ分かった。その精霊の姿を見た瞬間。
「猫だから私、大丈夫かなと思ってたのに~も~」
透き通った声で綺麗で雪のような髪の色、白い服装で肌も白い。全体的に白い美少女が背後から現れる。
「どうしてわかったの?ほんとロクったら分かりやす~いんだろうな~」
「―――?ん?」
体、心、魂の困惑が一気に消え、頭の中にあった恐怖が一瞬にして消える。これは『可愛いが正義』という―――
「これで怖くなくなった?魔法も久しぶりに使うから心配なんだ~!てへ!」
舌を出しながら片目でウィンク。あの可愛い可愛い猫が、もっとさらに可愛くなって、とうとう猫ですらなくなり、姿を現した猫だった。
「私の名前は四大精霊を造り出した精霊!時の精霊、レイルと言います!」
段ボールの中に入っていた猫は、微精霊でも、四大精霊でもない。『時の精霊、レイル』であることが発覚した。
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