0章 11.ガル

 アンカのお母さんの手料理を食べさせてもらうことになり目の前に出てきた料理をスプーンに乗せ口運んだ時の1言。


「うまっ!!!」


 シチューのような見た目だった料理は口に広がっていっても香り、味ともにシチューそのもの。キノコが嫌いな俺はシチューにキノコがあるか心配だったがない!1つも!!最高!!アンカも久しぶりの手料理だったようで、これまでにない笑顔だった。


「美味しいです!!さすがはお母さんの料理!」


「アンカちゃんのために3年間修行してたのよ、昔!」


「料理だけを3年も!!?」


 思わずツッコミを入れてしまったが本当にすごい。自分の娘に最高の手料理をつくるために3年、かなりの愛情がないとできないことだ。

 感心しながら黙々と食べ進めすぐに料理は消えてしまった。その後この店の魔道具を買ったり、アンカが3歳くらいの時の話やアンカのお兄さんの話、とかなり盛り上がった。5時間以上話した後、全員で魔法車を買うことになった。


「これが魔法車か」


 見た目は馬車の馬なしバージョンと言ったところ。魔法車の扉を開けると6人は入れるくらいの広さ。ソファーのようなものが1つとソファーの前には前が見える窓が1つ。


「どうやって動かすんだ?」


 てっきり魔法を原動力で操作すると思っていたが操縦席みたいなものは見当たらない。アンカが説明してくれたが、魔法で目的地の場所を魔法車に記憶させると勝手に動き出すとか。そんな便利でいいのだろうか―――


「さ~て。金額のほう……げっ……高い!」


 2人合わせて持っている硬貨は200枚(200枚すべてアンカの所持金)、魔法車は400枚の硬貨が必要。ただ俺は買えると思っていた。親バカであれば必ず。


「アンカちゃん!これでよかったわね!?すみませ~ん!!!」


「アンカ!母さんが買ってくれるっていってたからな!ま、当たり前だろ!アンカは可愛い娘だからな~!!!」


 アンカの頭を撫でる。そのときは少し呆れていたが、会計中に俺と話していると感謝ばかりしていると言っていた。親バカだからと言って娘への愛情は変わらない、すごくいい話。

 大きく頷き感動しているとちょうど会計が終わった。


「はい、これ!!」


「魔法車を動かすにはこの『カード』は必須だぞ?」


 お父さんは『カード』を渡す。免許証のようなものらしい。と思っていた時、思い出してしまった。他にも『カード』がいることを。


「アンカ……俺ちょっとギルド行ってくるわ……」


「あ、忘れてましたね。都市を出る準備をここでしておきますのでゆっくりでいいですよ」


 サンキューとお礼を言って走ってギルドのある場所へ向かった。


「ここか。早く終わらせていくか」


 古くもろそうなギルド、俺はすぐに扉を開けて中に入る。カウンターには1人の女性、横にある食堂には多くの冒険者の人がいた。気にせず冒険者カードをもらって行こうとしたがうまくいかず。


「おいおい兄ちゃん、冒険者になるのか?弱そうなお前にはまだ早いぞ?」


 体格ムキムキ、大剣を持ったかなり怖い男が煽るかのように言う。そんなことは気にせずカウンターまで歩いて女性に冒険者カードを作ってもらうように言った。その時――


「無視、か……腹立つな」


 あ~神様……怖いんです、あんな強そうな人相手に無理です。助けてください、あ~。顔を曇らせ俺はうつむく、人生BADENDと思った瞬間、背後から声がした。


「うっせえな。黙ってろよ」


 振り向くと銀髪短髪で鋭い目つき、体格かなり良い身長俺より高いまたもや強そうな人だった。


「なあ」


 銀髪の男に声をかけられ元気に返事をする。男は「うっせえよ」と言って俺の頭の上に手をのせる。すると彼の目に何かの紋章が浮かび上がった。


「うわっ!!なんだお前!何しやがった!」


 何かに突き飛ばされたかのように吹き飛び、壁に男がぶつかる。


「目でお前を見ただけだ。なんか文句あんのか?」


 男は彼の強さに怯え、ちっと舌打ちをしながらギルドから出て行った。そして俺を見て…。


「お前、強いと思うぞ」


 彼から想像ができなかった笑みを浮かばせ言った。この後も冒険者カードの使い方や魔人、中心国などいろいろと親切に教えてくれた、本当に想像ができない。


「じゃあな」


「ありがとうございました!」


「敬語やめろ」


 唇を緩ませ笑みを浮かばせた。俺も笑顔で手を振った後、アンカが待っているへと戻って行った。そして両親大号泣の中、俺たちは巨大都市ダーリアを出て、俺がギルドに行っていた時にアンカが考えてくれた目標の1つ目、『中心国へ向かう』……の前に、屋敷にあった段ボールの回収から始まった―――


「いいソファーだな」


「ごめん、状況理解できないけど!?」


 横には銀髪男がいたのだ。特に誘った覚えはないが。


「あ?俺がいて何か悪いか?」


「い、いや……悪いというか、何でいるのかな~って」


 彼は頭を掻きながら反対側を向いて。


「仲間に入れてもらいたくてよ……ダメか?」


 なんともまあー!!こんな怖い人が照れ隠し!!これはギャップ萌えというものもありそうなもんだ!


「いいぜ!!俺の名前はロクでこっちの美少女がアンカ!一応俺がリーダーって感じかな!」


 親指を上にあげ「よろしくな!」と笑顔で自己紹介。コミュ力少なめの俺にしては上出来だっ!


「俺はガルだ!よろしく頼むぜ、リーダー」


 突然のリーダー呼びで一撃ノックアウト。何度もやめてくれと頼んだがやめることなく彼が俺を呼ぶときは「リーダー」となり、いきなりの仲間ができたのだった。


「リーダー!かっけえな!」


「やめて!?マジでやめてよ!!!?」


「ロクさん……かっこいいですね!」


 ガルによる集中攻撃にアンカがおれの心に攻撃をしてクリティカルヒット。俺は魔法車での移動中、恥ずかしくて死にそうだった―――

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