case10 僕と窓
「朝だぞ、起きやがれクソ野郎」
「起こし方が雑なんだよ、窓のくせによ」
寝ぼけながら体を起こし、僕は外の景色を見た――のではなく、窓を見た。
透明だ。外の景色が見えるだけだが、僕が見ているものは実は違う。
一応、言っておくとして。
僕の家は普通だ。少なくとも、僕はそう思っている。
だが、僕の家に遊びにきたやつの全員が全員、普通だ――と言うのは、
あり得ないんじゃないかな?
誰だって『コイツ』を見ればそう思うだろう。
だって僕は確実に、『コイツ』を普通だとは思っていないのだから。
「起きたか――ならさっさと朝飯を食って、歯を磨いて、どっかいけ」
「なんだよどっかいけって。普通に学校にいけって言えよ」
「お前、今日は学校、休みのはずなんだけどなあ……、
いいぜ、いくならさっさといって、恥じをかけ」
「あー、そっか」
確かに、今日は開校記念日で、休みのはずだ。
それにしても、僕でも忘れていたことを覚えているとか――、なんなんだよコイツ。
未だにコイツがなんなのか、僕は分かっていない。
というか、分かるやつなどいるのだろうか?
分かったら、そいつを褒めたいくらいだ。
「だとしたら今日はすることなくなったなー、暇だー」
「だったらよー」
「嫌だ」
「否定が早いんだよボケ」
と、言われてもねえ。
コイツになにかを言われたところで、良いことが起きた試しなんてない。
いつもいつも不幸になっている気がする。
あ、コイツは不幸の窓なのかもな。
でも、まあ。
確かにやることがなくて暇だというのなら、少しくらいなら――。
「あ、そうだ、前から聞きたかったことがあるんだよ」
「なんだよ。窓が僕になにかを聞く? はっ、バカバカしいぜ?」
「ぶっ飛ばすぞ」
本当にされそうなので恐い。
どうやってするんだという話だが。
「で、なに?」
「ラジオが聞きたい」
いや、勝手に聞けばいいじゃんって感じなんだけど。
ま、そうもいかないか。
「で、買ってこいと」
「ああ、そういうこと」
はあ。
僕は溜息を吐いた。
仕方がない。
ひとっ走りいってきますか――と。
「どんなのがいい?」
とりあえず聞いてみた。
どうせ曖昧な答えだろうと思っていたが――。
「最新機種」
「欲張りだよてめぇっ!」
ったく。
貰えるもんはとことん貰うやつだな、こいつはよ。
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