09話.[気になったから]
「大くん」
「朱夏か、どうしたんだ?」
部活から帰ってゆっくりしていたときに電話がかかってきた。
別に不安そうな声音というわけではないが、少し気になるところだ。
「いまから行ってもいい?」
「それなら迎えに行く」
「うん、じゃあ待ってる」
あれか、きっと零や千葉に影響されたのだ。
風呂を溜めてから外に出て。
「ごめんね」
「別にいい」
謝ってくる彼女を連れて家に――とはならなかった。
ただ会いたいだけなら俺の家に来る必要はない。
零の家と違って両親の帰宅時間も遅いから連れて行ってもいいんだけどな。
「今日さ、七星ちゃんが零くんに甘えているところを見てさ」
「意地が悪いな、追ってやるなよ」
「だって気になったから、なんか寂しかったんだもん」
あいつにとっては家族以外で唯一近づいて来てくれる異性だった。
朱夏もありがたがられて少し気分が良くなっていたんだろう。
それがいつの間にかああなっているんだから面白い話だ。
でも、あいつが珍しく勇気を出した結果なんだからおめでとうとだけ言ってやるべきだろう。
「ほら」
「うん……」
「大丈夫だ、千葉の相手ばかりするわけじゃないだろ」
「……寂しい」
「おいおい、朱夏の彼氏は俺だろ?」
「そうだけど――ん……」
零のことは嫌いではないがそれとこれとは別だ。
そうでなくても学年が違くて心配になるからな。
「俺がいる」
「……うん」
それだけはあってほしくない。
絶対に離すことはしないってまた決めたのだった。
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