第21話 二章♢ありがちなラブロマンス 09
──揺れる馬車の中、不思議な光景を見た。
眩しくて誰だかはわからないけれど、同い年くらいの子供達がこちらに手を伸ばしている。子供達の後ろには大人が立っているようだ。
私の両隣にも誰かがいて、顔は見えないけれど笑っているとわかる。
ただひたすらに眩しくて、でもそうすべきだと確信して、彼らに手を伸ばす。
その手が彼らに触れるよりも前に、雷が大気を震わせる音で、私は目を覚ました。
唐突に豪雨が馬車を襲う中、家に着き、私は寝惚け眼をこすりながら、アルに約束した通り長いお風呂に入る。
一体、どういうことなんだろうか。ただでさえ今日という一日に疲れ切っているのに、不思議な夢を見たせいで寝た気にはなれず、その上晴れていたはずの空模様は一気に土砂崩れし、今は台風がきたかのような雷鳴轟く豪雨。
そんな中、お湯の温かさにうとうとしていると、私の専属メイドであるモルアナことルナがふやけちゃいますよ、と笑って起こしに来た。
「う〜ん、今日はほんとに疲れたよ…」
「お疲れ様ですお嬢様。アルバスからも聞いていますよ」
されるがまま、ルナに体を拭かれ、髪を梳かされ、室内着に着替えさせられる。
くぅ、と可愛らしい音で空腹を主張する私のお腹。年相応の食欲を知っているルナは、音を聞いてふふと笑った。
「もう、ルナ! 笑わないで!」
「申し訳ありません、とても、可愛らしかったもので」
ルナはアルと違い、しっかりと私を貴族のお嬢様として扱ってくれる。だからこそ、ルナの前では10歳の女の子で居られる。
ルナの前では貴族っぽい表面下のやりとりなどしないし、ルナもそういった扱いはしてこない。
室内着に着替え終わって、ルナに促されながらダイニングに向かう。
「アリスちゃん! ゆっくりできた? 大丈夫?」
あの誕生パーティー事件以降、すっかり心配性になってしまったお母様が心配そうな顔でウロウロとダイニングに入ってきた私の周囲を歩き回った。
お父様はテーブルについたままだったけれど、心配そうな顔でこちらを見ている。
「はい、お母様、大丈夫!」
すぐに結果を聞きたかったでしょうに、ありがとうと言うと、ようやくお母様は笑顔になった。
ホッとした様子のお父様も、お母様にテーブルに戻るように促す。
お母様は珍しく、その言葉に何も言わずにすっと素早く席に戻った。
「では、いただこう。アリス、『神の祝福』、お疲れ様」
「はい、お父様。ありがとう!」
「それでそれで? 一体どなたから祝福をいただいたの?」
食事を進めながら、今日あったことについて説明をしていく。
どこまで言っていいものか、考えながら話す。特に話すなとは言われていないけれど、世界や国の情勢に影響を与えてしまいそうな情報もあるから。
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