第17話 二章♢ありがちなラブロマンス 05

まぁ、両親のあれやこれやは小説にもなるくらい有名な話な上、両親本人たちからも聞くことができる話なので、今思い出すことではないかもしれない。

けれど、その前提はなしを知っていなければ『あの日』の両親が頑張っちゃった話を聞いてもピンと来ないと言うものだ。

両親がそこまでデタラメな力を持っているとは、私も思いもしなかったのだから。


アルが説明してくれた、あの日の仕掛け。

王家の覚えもめでたいお父様は、なんと王様に「娘がいじめられた」と進言。

この時点で私は少し気が遠くなった。王様になんて話をするんだ父よ、と。

お母様はお母様で、社交界で鍛えられた目を持ってして選び抜いた信頼に足るご婦人方に、「娘があの歳で嫌味を言われ、それを気にして健気に耐えていたこと」を少しの誇張とともに漏らす。

お母様は今もなお流行の最先端をゆく、元『異国の踊りシンデレラ』。お母様とお父様の娘溺愛ぶりは周知の事実だったこともあり、社交界で瞬く間にこの件が噂になる。

お父様から事実をあらかじめ知らされていた王は、周囲を困惑させたことに対する事実確認を行うために男爵を『事情聴取』した。

その『事情聴取』では、数々の証拠を突きつけられた男爵が自白。『神の祝福』もまだ済んでいない幼子に対し、事実無根の暴言を浴びせたことや、格上の伯爵家に対しありもしない噂をいたずらにし風評被害をもたらしたとして、なんと男爵の位を当代限りで返上という結果になったそうだ。


とまぁ、白目をむいてしまうような展開があった、と。


「聞くんじゃなかった…」


「だからタブーなんですって言ったじゃないですか」


ふぅ、とため息をついたアルは言葉を続けた。


「そもそも、男爵が伯爵家に対して行ったことは許されることじゃないですしね。証拠もザクザクありましたし」


「はっ! そう、そうよ! 証拠!」


証拠はどこから?と問うと、アルはまた嫌そうに顔を歪めた。


「聞きたいんですか?」


嫌な予感はあるものの、ここまで聞いたのなら全てをはっきりさせておきたい。

ブンブンと頷くと、アルはこれまたしぶしぶ話だした。


「メルディロード家は、その…かなり特殊な家ということに、自覚はあります?」


「私の前世は平民魔術師よ? 流石にちょっと変ってことくらい分かるわよ」


「…ちょっと、じゃあないんですよ。ま、あんまり詳しく教えちゃうと怒られるので、勘弁してください。で、その特殊性が活かされた結果、証拠があふれんばかりに入手できたんです」


「ねぇ、肝心なところがわからないんだけど?」


「いや、だから勘弁してくださいって。」


らしくなく、バリバリと頭をかきむしるアル。

。つまり、かなり動揺しているのだ。

素が出てしまうほどに。


「アル。ううん、アルバス 。ちゃんと、教えなさい」


「ああもう…こんな時に命令ですか。命令ってのはもっと、大事な時にするもんですよ」


先ほどよりはるかに深いため息をついて、アルは首を振った。

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