第11話 ありがちな前世の記憶? 10
「さ、コレで『神の祝福』は終わったっス!」
一瞬で元の軽薄そうな笑顔に戻ったライトニングに驚きはしたものの、長い長い前置きの割にあっさりと終わった儀式に肩の力が抜けた。肩に力が入りっぱなしだったことにようやく気づいた頃に儀式が終わったのは、年頃の子供そのものだ。
「オマケで、オレに近しい精霊たちに特別好かれるようにしといたっス! コレで魔法も思う存分、使えるっスよ〜」
「あ、ありがとうございます、ライトニング様…?」
別に今の私は、そこまで魔法にこだわっているわけではないのだけれど…。けれど、精霊に好かれることは悪いことではないし、特別目立つというわけでもない。精霊から加護を貰う人もいるわけで、精霊に嫌われるよりかはありがたい。ただやはり、ライトニングが前世のことを考慮して「好かれるようにした」のだろうかと思うと、素直に喜べない私がいるのも事実だった。
あと純粋に、今、「特別」という言葉に不安しかない。
「いやいや、元々”アリス”は精霊に好かれては居たっスよ? なんせあの”ディディ”と”ワイズ”の子なんスから」
──先ほどからライトニングの言う”ディディ”、”ワイズ”と言うのは、私の両親のことだ。この世界の名前というのが少し面倒…いや、少し特殊で、呼び方に何通りもある。その中でも、オーダーネームを愛称で呼ぶというのは『家族』にしか許されない事で、万が一平民が貴族のオーダーネームを愛称で呼んでしまえば、死罪もありうるような、そんな面倒な世界なのだ。
で、ライトニングが私たち家族をそう呼ぶのは、加護を与えたからというのもあるが、おそらく、『特別目にかけているよ』というアピールなのだと思う。あのエーテルコラですら、母をディディとは呼ばないのだから。
そんな母と父の子供に生まれた私が精霊に好かれている、というのもわからない話ではない。あのラブロマンス両親は本当に規格外なのだし。
「まぁ、前世が魔法に関する職でしたし、なんとなくわかってはいましたけど…」
「ま、そうっスよね! オレは前世は詳しく知らされてはいねぇっスけど」
流石にそこは管轄外っス〜と笑い、ライトニングはひらひらと手を振った。
「さ、ディディとワイズが心配して神殿前をうろうろしてるっスよ。それを見て神殿にちょっとした人だかりができつつあるんス。これ以上は、ね?」
「ハッ──! お父様の親バカが始まっちゃう!」
ライトニングの意図を察して、バッと頭を下げた。
スッと息を吸って、大きな声で叫んだ。
「フレイア様、アクアエリオス様、グラインド様、ライアルエア様、ライトニング様!」
「終わったこととはいえ、ありがとうございました! 私は、今度こそ──」
ニコッと笑い、高らかに宣言した。
「老衰で死にます!」
「「「「いい笑顔で言うことじゃない!!!」」」」
「アッハァ! やっぱオレが見込んだだけあるっス! おもしれぇ!」
「待ってサラちゃん! 私! 私はぁ!?」
神殿の空気が変わっていくのが分かる。神様たちが去って…いや、多分、私が世界に戻ってきている。
苦笑するフレイア、ため息をつくアクアエリオス、諦めたように笑うグラインド、やれやれと笑顔で首を振るライアルエア、お腹を抱えて笑い転げるライトニング。
こちらに向かって涙目で手を伸ばすエーテルコラには、絶対に、何も反応してやらない!
──それくらいの小さな復讐は、許されるでしょ?
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