第39話

 俺は、魔法陣の中に開いた『魔界の扉』、そこに半身を埋没させたヒラクルを見下ろしていた。


「お……おおっ! す、スカイよ! 待ちかねておったぞ! 今までなにをしておったのだ!

 こ、これは『世継ぎの儀式』といって、そなたがこの国のハイランダー一族の長となるために、必要な儀式なのだ!

 これよりそなたは『大公』となり、このワシは『侯爵』となったのだ!」


------------------爵位一覧


大公

 ↑昇格:スカイ


侯爵

 ↓降格:ヒラクル


伯爵


子爵


男爵

 タランテラ


廃爵


追放

 アングラー

 アギョとウギョ

 フロッグ

 ブルース


-------------------


 俺は片脚を振り上げると、そのハゲ頭をめいっぱい踏みつけた。


 ……グシャッ!


 ヒラクルの身体が、肩まで埋まり込む。


「ぎゃはあっ!? そ、そうか! このワシがいつまでたっても迎えに行かなかったから、ヘソを曲げておるのじゃなな!? ワシとしたことが迂闊であった! ならワシは『伯爵』になって反省をしよう!」


------------------爵位一覧


大公

 スカイ


侯爵


伯爵

 ↓降格:ヒラクル


子爵


男爵

 タランテラ


廃爵


追放

 アングラー

 アギョとウギョ

 フロッグ

 ブルース


-------------------


 ……グシャッ!


 ヒラクルの身体が、首まで埋まり込む。


「ぶぎゃっはぁーーーーっ!?!? ま、まだお前の怒りは収まらんというのか!?

 な、なら、さらに2段階降格というのでどうだ!? タランテラと同じ『男爵』だ!

 かっ、かぁーっ!? このワシも落ちぶれたもんじゃのう! かぁーっ!?」


-----------------爵位一覧


大公

 スカイ


侯爵


伯爵


子爵


男爵

 ↓降格:ヒラクル


 タランテラ


廃爵


追放

 アングラー

 アギョとウギョ

 フロッグ

 ブルース


-------------------


 ……グシャッ!


 ヒラクルの身体が、鼻まで埋まり込む。



「ひぎぃぃぃぃぃーーーーーんっ!? な、なんじゃ!? ここまでしてやったのに、なにが気に入らんのじゃ!?

 あっ、わかった! そなたを苦しめたタランテラが、のうのうと男爵におるのが気に入らんのじゃな!?

 な、なら、『追放』しよう! そなたと同じ苦しみを味わわせてやったぞ! ヤッターッ!!」


-----------------爵位一覧


大公

 スカイ


侯爵


伯爵


子爵


男爵

 ヒラクル


廃爵


追放

 ↓降格:タランテラ


 アングラー

 アギョとウギョ

 フロッグ

 ブルース


-------------------


 ……グシャッ!


 とうとうヒラクルの全身が埋没し、地面から露出しているのは頭頂部だけになった。


「ひっ……ひっ……ひいいっ! ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーんっ!!

 ま、まさかこのワシまで『追放』しようというのか!?

 わ、わかった! わかりました! 任命責任を取って、このワシもハイランダー一族から消え去ります!

 だ、だからお願い! お願いします! たっ、助けてぇぇ!!」


 ヤツの声がなりふり構わないものとなる。

 魔界の扉のなかにすっぽりと埋まったヤツは、おそらく眼下に広がる地獄を見ているのだろう。


 俺はここで、ヤツに初めて声をかけた。

 言葉を交わしたのは、十年ぶりくらいくらいかもしれない。


「貴様には、『追放』すら生ぬるい……!

 生きたまま地獄に堕ち、生者でも亡者でもない、永遠の責苦を受けよっ……!」


 ……ドグワッ……シャァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!


「すっ、スカイさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」


 魔界の扉に吸い込まれ、堕ちていくヒラクル。

 扉はやがて閉じ、ただの地面に戻った。


-----------------爵位一覧


大公

 スカイ


侯爵


伯爵


子爵


男爵


廃爵


追放

 タランテラ

 アングラー

 アギョとウギョ

 フロッグ

 ブルース


獄門

 ↓降格:ヒラクル


-------------------



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 セイクルド王国のハイランダー一族は壊滅した。

 俺の『おためしハーレム』はすべての権力者に受け入れられ、俺はラブラインを第一夫人として結婚する。


 そして、新婚旅行の当日。

 俺は、『あおぞら荘』の前にいた。


「みんな、準備できたかー!?」


 外から声をかけると、それぞれの部屋の扉から、俺の嫁たちが顔を出し、十人十色の返事を返してくる。

 俺はコキコキと首を鳴らしたあと、


「よいしょ、っとぉ……!」


 『あおぞら荘』を、土台ごと持ち上げたっ……!


「よぉーし、それじゃあ行くぞっ! 俺たちの、空飛ぶ新婚旅行に……!」


 ……どばひゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

中年ジャンプ 佐藤謙羊 @Humble_Sheep

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ