第22話
「アギョッ! ヒラクル様、アギョとウギョ、これに。いかような御用でしょうか?」
「いま、『ハイランダー運送』の中層階級エリアを仕切る貴様らを呼び出すといったら、用件はひとつしかあるまい。首尾はどうだ?」
「うっ、ウギョ……。そ、それが……」
「あっ、アギョ……。手下どもがどうにもふがいなくて、芳しくなく……。
で、でもすぐに、『運び屋スカイ』を潰してごらんにいれますゆえ……!」
「どうせ貴様らは力にものを言わせているだけなのだろう。
筋肉があるからといって、そればかりに頼っていてどうする。少しは頭を使うのだ」
「うっ……ウギョーッ! も、申し訳ございません!」
「あっ、アギョッ!? 頭を使うとは盲点でした! さっそく手下どもに、頭突きで戦うようにと……!」
「もうよい。貴様らはワシの言うとおりに動け。
今日貴様らを呼び出したのは、それを伝えるためでもあったのだ」
「ははっ!」と頭を下げるアギョとウギョ。
ヒラクルは懐から小瓶を取り出す。
「もうじき、フロイランの誕生日であろう?」
「ウギョッ! そちらについては抜かりありません! 今年もちゃんと激マズ薬を……!」
「今年は激マズ薬ではなく、この毒薬を混ぜるのだ」
「えっ、毒薬!? そんなものを混ぜたら、フロイラン様は死んでしまいます!」
「それが狙いだ。乳母の差し入れた料理で、王位継承順2位の娘が死んだら……。
『おためし婚』など、メチャクチャになってしまうであろうなぁ……!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ある日、いつものように荷物を補充しに事務所に戻ったら、『ハイランダー運送』のヤツがいた。
てっきりまた嫌がらせに来たのかと思ったが、いつもとは様子が明らかに違っていた。
ソイツはいつものチンピラではなく、貴族のようないけすかない気品をまとっている。
制服も通常の『ハイランダー運送』のものよりずっと立派で、サーコートのようなデザイン。
キビキビとした動作で、ナニーナから大きなバスケットを受け取っていた。
「それじゃあ、よろしくお願いいたしますね」
「はっ、かしこまりました、ナニーナ様」
俺はふたりの間に割って入る。
「おいナニーナ、これはなんだ?」
「今日は私が乳母をつとめたフロイラン様のお誕生日なの。
私はラブライン様の専属になったから、お誕生日には行けないのだけれど、こうしていつもお料理を差し入れしているの」
ナニーナは王族の乳母という立場は秘密のはずなのだが、今は素に戻って話している。
おそらく相手が、王室付きの『ハイランダー運送』のスタッフだからだろう。
王族の荷物は現在、『ハイランダー運送』が一手に担っている。
それで俺は、おおよその事情を理解した。
「でもお料理をお送りしても、フロイラン様はぜんぜんお返事をくださらなくって……。
それでも『いらない』とは言われていないから、毎年お送りしているのよ」
ナニーナは少し寂しそうにしている。
「だったら俺が届けてやるよ。俺のほうがずっと早いし、相手の反応もわかる」
俺はいけすかない野郎から、問答無用でバスケットをひったくる。
そのまま事務所の外に出ると、ナニーナが慌てて止めにきた。
「待って、スカイさん。
王族あての荷物は、ぜんぶ『ハイランダー運送』で送らなくちゃいけない決まりがあるの。
それに、スカイさんに頼んだほうがずっと早いのもわかるけど、相手の反応がわかるって、どういう意味……」
「それは、こういう意味だよ」
俺はナニーナの身体を抱き上げると、後ろから追いかけてきたいけすか野郎に砂かけする勢いで飛び上がった。
……どばひゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!
「あっ!? あーれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーっ!?!?」
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