第7話
フロッグとブルースは全力で『スキル痕』の鑑定を拒否しようとしていた。
いままで悪事ばかり働いていまの地位にのしあがったヒラクルは、すぐに察する。
「お前たち、まさか……! あ、こ、国王! わ、我が一族を代表して、鑑定には反対いたします!」
「なぜじゃ!? 鑑定されると困ることでもあるのか!?」
「い、いえ、決してそのようなことは……。ただ今日は、お日柄もよくありませんので、後日ということで……」
「ええい、余はどちらが勇者なのか早く知りたいのだ! おい、鑑定人を呼べっ!」
結局、王の鶴の一声で『スキル痕』の鑑定が行なわれることとなった。
フロッグとブルース、そしてヒラクルは奇跡を願ってお祈りしていたが、鑑定員から告げられたのは非情なる結果であった。
「『ハザマノカミ』を倒したのは、『ジャンプ』というスキルツリーに属するスキルのようですね。
しかも外傷は他に一切ありませから、そのスキルの一撃で倒したことになります」
国王は仰天した。
「な、なんと……!? 『ハザマノカミ』を一撃で!?
そんな強力なスキルがこの世に存在するというのか!? いずれにしても、桁外れの勇者ではないかっ!?
もっと他にわかったことはないのか!?」
「はい。そのスキルは高く飛び上がった後、降下して攻撃するスキルのようです。
ですので、『神狩り』が使うスキルだと思われます。
そして『ハザマノカミ』の顔に、大きな足跡が残っているのがご覧になれますか?
このスキルには着地点に足跡を残すという、独特の特徴があります。
しかしその特徴以上に驚きなのが、その高さです。
飛び上がる高さが尋常ではありません。天空ほどの高高度から飛び上がったものと思われます。
「て、天空ほどの高高度だと!? それは人間ではなく神ではないのか!?
そんな神がかったスキルの使い手は、いったい何者だというのだ!?」
「はい。使い手の名前は、スカイ……!」
これにはハイランダー一族たちがひっくり返っていた。
「えっ……ええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
王の隣でこの報告を聞いていたラブライン。
もし彼女がスカイの名を知っていたら、誰よりも色めき立っていたことであろう。
今は恋する乙女状態だったので、彼女はそのままスルーしかけた。
しかしあるキーワードが、頭のなかに引っかかる。
――『天空ほどの高高度』……!?
もしや、わたくしを助けてくださった、あのお方なのでは……!?
そしてラブラインの視界に偶然、ひっくり返ったままのブルースの顔が飛び込んでくる。
瞬間、彼女の頭の中で、パズルのピースがパチリと嵌まった音がした。
ラブラインはブルースを指さし叫ぶ。
「お……お父様! そこにいるマスクを被った殿方が、わたしを襲った者です!」
「なんだと!? それはまことか!?」
「はい! わたくしを助けてくださったお方も、空から現れて、狼藉者を懲らしめてくださいました!
きっとそこにいる殿方のマスクの下には、『ハザマノカミ』の顔にあるのと同じ、足跡があるはずですっ!」
「ぶっ……ぶるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
真実を突きつけられたブルースは、慌てて這い逃げようとする。
しかし豚のような肥え太った身体で逃げ切れるはずもなく、衛兵に取り押さえられてしまった。
「ぶひっ!? ぶひっぶひっ!? ぶひぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
とうとう本物の豚のように泣き喚き、暴れ出すブルース。
しかし抵抗むなしく、罪人のように跪かされて、マスクを剥ぎ取られてしまう。
その下には、なんとといか、やはりというか……。
くっきりとした足跡がついていた。
『ろくでなしデブルース』という文字つきで。
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