第9話 Description

「逃がすってどういう事だ?」

「そうよ。どういう事なの?」


 ディエゴとロスが川畑の言った事がわからずに首を傾げた。だがシスコにはその言葉の意味がわかっていた。そしてそれをわかった上でシスコは川畑に尋ねた。


「いきなりそんな事言い出すなんて、どうしたんですの?」

「悪いんだけど詳しく話している時間はないんだ。だけどこれだけは言える。この世界は、君たちがいなければ

「終わるって……どういう事ですの……?」

「そのうち嫌でもわかると思う。シスコ、他のみんなに色々教えてあげて。俺からの、最後の頼みだ」

「え? あ、はい……」


 シスコはそう返事したが、わからない事が増えてきた。わたくしたちがいなければ世界が終わる? 嫌でもわかる?


 どういう事かまとまらない内に飼育ケースの天井が開け放たれた。川畑が半ば強引にケースの天井を取り外したのだ。


「うわー! 空が割れたぁ!」

「なになになになに!?」

「ら、ラグナロクじゃあ……」


 シスコ以外の三匹が軽いパニックを起こしていた。そしてさらに飼育ケースが90度回転した。川畑が痛みに堪えながらケースを倒したのだ。四匹は改造された反射神経で何とかバランスを保った。


「じゃあ、俺はいかなきゃならないところがあるから」

「ま、待って下さ――」


 シスコにはまだ疑問が多く残っていたが、それが解消されないまま川畑は研究室から出て行ってしまった。


「ちょっと! どういうことなのシスコ!」


 ロスがせわしなく翼をはためかせシスコを問い詰めた。シスコは皆さんとりあえず落ち着いて下さいと宥めた。シスコは三匹が何とか平静を保とうとしたのを確認したところで、再び口を開けた。


「全部話しますわ。わたくしが理解している、この世界について」


 シスコはこの世界の真実の姿を三匹に話した。


 四匹は今まで作り話の世界を研究者たちから教えられていた。不都合な情報が知られないようにするためであったのだが、シスコだけが作られた世界に疑問を感じ世界の真実を突き止めるまでに至った。研究者たちはシスコに敵意が無いと確認するとシスコだけには積極的に様々な知識を授けていた。その授けられた様々な知識をシスコは三匹に教えられるだけ教えた。やがて他の三匹も次第に理解を深めていった。


 そうして彼女ら四匹は、世界を救った現代の聖獣として後々語り継がれることになるのであった。


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