第5話 とほうにくれたてんごく
ここはてんごく。のこされたさんにんのカミサマたちがとほうにくれています。むりもありません。カミサマのひとりであるやまざきが、こうつうじこでとつぜんこのよをさってしまったのですから。
さんにんのなかで、ほしかわがとくにおちこんでいます。ほしかわは、やまざきとこいびとどうしでした。けっこんをほんきでかんがえるくらいのなかでした。
せいじゃくが、ひろいてんごくのなかをみたしています。
「私、山崎さんを生き返らせたいです」
ほしかわのそのひとことで、ながいせいじゃくがやぶられました。
「気持ちはわかるよ。だが今この段階で人間にアレを使うのは無茶すぎる。ちょうろうだって今ピンピンしているが、いつ様子がおかしくなるか……」
おおいしがなだめるようにいいました。ですがほしかわはますますムキになってしまいました。
「そんなのわかってます! だけど! 助けたいときに、助けたい人を助けられないんじゃこんな研究意味ない!」
「そんなことは、ない……」
おおいしはそういいましたが、ほしかわのいったことにはんろんができそうになく、どんどんこえがちいさくなってしまいました。
ふたたび、てんごくにせいじゃくがみちていきます。
それはながいながいじかん、つづきました。
こんどはかわはたが、せいじゃくをやぶりました。
「出来るなら、俺も助けたい。でも無理だと知識が、理性が言っている。だけどこんな事も言っている。今ならまだ間に合うかもしれないと」
もしかしたらこんどは、こえられないかべではなく、こえてはいけないかべをこえることになるかもしれない。かぎりなくくろにちかいしゅだんをつかうことになるかもしれない。いまのことばには、そんなおもいが、つまっていました。
「大石先生、俺はやりたいです。ですから、もし、先生も協力してくれるなら、今から遺体安置所に行って山崎の遺体を回収しに行ってほしい。研究のためだと言えばなんとでもなるでしょう。星川はちょうろうの血清から可能な限り高純度なアレを作ってくれ。俺は俺で、やらなきゃいけないことがある」
「な、なにをやるつもりなの……?」
ふあんそうなかおで、ほしかわはかわはたにたずねました。
そしてかわはたはいたってまじめなかおで、こうこたえました。
「彼女に別れを告げてきます」
「え!? ちょ、それってどういう!?」
「俺は彼女より君を選ぶんだ。君の願いを叶えるんだ。だからだよ」
「え、いや、その――」
「もし駄目だったらさ、俺と結婚しよう」
とまどうほしかわをやさしいかおでいちべつし、かわはたはてんごくからさっていきました。
てんごくのそとにはいったいなにがあるのか。それは。
だいがくです。まいにちいろいろなひとがやってきて、いろいろなことがおこるせまくてひろいふしぎなせかいです。
だいがくには、かわはたのこいびともいます。
かわはたはポケットからスマホをとりだし、こいびとにメッセージをおくりました。
「優里ちゃんしなきゃいけない話があるから5限が終わったら200講義室に来て」
これが、かわはたがこいびとにおくったメッセージのないようです。
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