第3話 こえられないかべをこえる

 ここはてんごくです。いいかえると、よんひきがくらすむらのそとです。


「実験開始だ。川畑くん」

「はい」


 おおいしというとしをとったカミサマが、かわはたというわかいカミサマにいいました。かわはたはうなずくと、いろいろなそうちがくっついているちょうろうのしがいにちゅうしゃをしました。ふしぎないろのえきたいが、ちょうろうのちいさなからだにはいっていきます。


「これが成功すれば、世紀の発明だ」

「ま、俺たちとっくにとんでもない発明しまくってますけどね。人間と同等の知能を持つハムスターに、ヘビに、インコ。それとこのネズミ。死んじゃってますけど。人間以外の知的生命体作っちゃってますからね。世間に漏れたらとんでもないことになりますよ。そして今度は死者蘇生ときた。もしSFだったら考証が足りないだのボロクソ言われてますよ。最近彼女の影響で色々映画観てますけど、ピクサーでもここまでムチャクチャな事はしませんよ」


 かわはたがおどけてのろけるようにいいました。せかいやむらとおなじように、ディエゴもシスコもロスもちょうろうもすべてかれらてんごくのカミサマがうみだしたのです。


「普通に考えたらムチャクチャすぎてありえない。でもそれを可能にしちゃうのがここ、大石研究室なんですよね」


 ほしかわというわかいじょせいのカミサマがめをかがやかせながらいいました。


「そうだ。我々は今までの常識を破壊するためにここにいる。そして世界は我々の手によって変わる。断言できる」


 おおいしがじしんたっぷりにこたえました。


「なんか僕たち、悪の組織みたいですね」


 やまざきというだんせいのかみさまがパソコンでちょうろうのデータをみながらいいました。なにげなくいったことばでしたが、おおいしはいきをあらくしてすぐさまはんろんしました。


「いいや。今までがおかしかったんだよ山崎くん。我々だけじゃない、人類全てが悪の組織なのだよ。そもそも地球は人間だけの星じゃない。それなのに人間は誕生して以来自分たちは特別なのだと驕り高ぶって我が物顔で地球を支配してきた。そんなの他の動物からしてみれば冗談じゃない。だが人間に対して何も言う事ができない。戦う事もできない。だから人間は止まらずに、止められずに、ここまで来てしまった。この状況はおかしいと動物を守ろうと声を上げた人間も中にはいた。だが結局は潰されてしまった。愚かな人間どもによってね。動物の気持ちがお前にはわかるのかってね。わかるわけがない。だってそのせいで、そのおかげで、人間は今ここにこうしているのだから。いいかい。我々がやってきたこと、やろうとしていることは決して悪ではない。少し風向きを変えるだけのことなのだよ。動物たちにも人間と戦うための武器を持たせる。結局はそれだけのことなのだよ」

「そうですよね! なんかすみませんでした!」

「わかればいいのだよ。で、データの方はどうなんだい?」


 やまざきはふたたびパソコンにむかいました。そしてがめんをみて、やまざきはとてもびっくりしました。


「心拍数がどんどん上昇していってます!」


 てんごくにいるよにんのカミサマのやっつのめは、よこたわっているちょうろうにそそがれました。


 そして、ついにそのときがきました。


「むぐぅ……。わしは一体……?」

「ちょうろう!」

「ちょうろー!」

「やった! やった!」

「成功、だね」


 ちょうろうはふたたび、めをさましました。カミサマたちはおきあがってつぶやいたちょうろうをみて、おおきなかんせいをあげました。


 カミサマたちは、いままでありえないといわれたことを、とうとうやってのけたのでした。しんだどうぶつのそせい。それはつまり、せいぶつとしてぜったいにこえられないかべを、のりこえたのとおなじことでした。


 そしてそれからせかいは、おおきくかわりはじめるのでした。


 


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