第2話 ちょうろう、てんごくにいく

「言っとくけど私は悪くないからね!?」


 ちょうろうのなきがらを、どうすることもできずのこったさんひきでかこっていると、ロスがいいました。むこうがいきなりこうびをようきゅうしてきたんだしそりゃけるわよと、ロスはつづけました。


「まあ、あれはちょうろうが悪いな。うん」


 ことのてんまつをめのまえでみていたディエゴがロスをかばいました。もうけんかをしているばあいではないと、さすがにかんじとっていました。


「でしょ!? いくらなんでもいきなりあれはマジありえなくない!?」

「それな。老い先短くてムラムラしてたのかもしれないけど、あれは引く」

「だよね。ホントマジキモイ……」


 すっかりなかなおりをしたようなディエゴとロスをみて、シスコはかんがえました。もしかしたら、ちょうろうはじぶんがぎせいになることでふたりをなかなおりさせようとしたのではないか。こうなることをみこしたうえであんなことをいったのではないかとおもいました。ほんとうにむらむらしてロスとこうびをしたかっただけなのかもしれませんが。


 ですがちょうろうはもうしんでしまいました。めのまえにいるちょうろうはただのしたいです。いまとなってはしんじつをしるすべはありません。こんなことならわたしひとりでどうにかするべきでしたわと、シスコはこころのなかでつぶやきました。


「おはよー諸君、ってどうしたんだ?」

「あ、カミサマ……」


 するとそらから、しろいふくをきたおおきなカミサマがむらをのぞきにやってきました。カミサマはこのせかいとむらをつくった、とてもえらくてすごいひとです。


「あ、あの、ちょうろう様が!」

「ちょうろう? わお、これはまた派手にやったな。一体誰がやったんだ?」

「私よ」


 ロスはかくれもごまかしもせず、そらにちかいきのえだまでとんでつかまり、すなおにじはくしました。


「ロスなのか。何で殺したんだ?」

「だっていきなり交尾してくれとか抜かすんだもんあのジジイ」

「交尾ぃ? いやいやインコとネズミじゃどうやってもできないだろ」

「やっぱりそうよね! なのにあのジジイ躊躇いもせずに言ったのよ!」

「なんでそんなこと言ったんだよちょうろうは」


 カミサマはしばらくなやんだあと、そらからてをさしのべちょうろうをてんごくへとつれていきました。


「あ、あの、ちょうろう様は!」


 シスコはかんがえたことをカミサマにいおうとしました。このままではちょうろうはインコによくじょうしたただのすけべネズミだったとおもわれてしまいます。せめておめいだけはぬぐわないとと、シスコはおもったのです。


 ですがカミサマは、シスコにおもいもよらないことをいいました。


「大丈夫。ちょうろうは帰ってくるよ」

「え?」


「正也ー! 何があったんだー?」

「ちょうろうがロスに殺された」

「なんだって!? 恐るべしロサンゼルス!」

「セクハラしたんだってさ」


 カミサマはほかのカミサマによばれ、ちょうろうをてにかかえたまま、どこかへといってしまいました。


 ちょうろうはかえってくる? いったいどういういみなんでしょうか?


 シスコはわーきゃーもりあがっているディエゴとロスをながめながらしばらくかんがえましたが、こたえはでませんでした。

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