ちいさなせかいとおおきなカミサマ
夜々予肆
どうぶつのせかいとカミサマのせかい
第1話 たのしいむらでのせいかつ
これはちいさなせかいの、ちいさなちいさなむらのおはなしです。
このむらでは、よんひきのどうぶつが、なかよくのんびりくらしていました。
きょうもひろばでは、たのしいわらいごえがひびいています。
「よーし! 今日は何して遊ぶ? かけっこか? かじり対決か?」
まずさいしょに、とってもげんきなきいろいハムスターのディエゴが、みんなにたずねました。ディエゴはあそぶのがだいすきです。
「んー。胸キュン台詞の言い合いっことか?」
みどりのインコのロスが、そんなことをいいました。
「胸キュン? 心筋梗塞か何かなんの? ヤバくね?」
ディエゴには、むねきゅんということばのいみがわかりませんでした。いわれただけでしんぞうがいたくなることばが、このせかいにはあるのか? ディエゴはそうおもいました。
「はあ? 胸キュンも知らないのあんた? ほんとバカね!」
「ぐ、ぐはっ……これが、胸キュンか……!」
ロスにののしられ、ディエゴはむねがいたくなりました。またひとつかしこくなったなと、ディエゴはおもいました。
「いやいや違いますわよ!?」
「え!? 違うの!?」
「違うんかい!」
ディエゴがかんちがいしてしまったのをみかねて、しましまもようのヘビのシスコがあわててくちをひらきました。にひきはちがうというじじつにびっくりしました。どうやらロスもかんちがいしていたみたいです。
「胸キュンは胸が痛くなる罵詈雑言の事ではありませんの。確かに胸が締め付けられるという意味ではありますけど、それは殿方の素敵な振舞いに思わずドキっとしてしまうといった意味で言っているんですのよ」
「ああなるほどそういう事だったのね理解したわ」
「おいちょっと待て」
なるほどとうなずいたロスにディエゴがつっかかりました。
「まさかお前みんなで罵り合いをするつもりだったのか?」
「そうよ。だってそういうの、刺激的でしょ?」
「悪魔か!」
「インコよ!」
「そうじゃねえよ! 悪趣味だってことだよ!」
「はあ!? そういうあんただってくだらないわよ! なにがかじり対決よ! そんなのやって何になんのよ! ただの器物損壊じゃない!」
「あーあー。お前にはあの楽しさわかんねぇんだろうな。くちばしだし」
「ふざけんじゃないわよこのずんぐりむっくり!」
「やんのかボケ!」
なんてことでしょう。ディエゴとロスがののしりあいをはじめてしまいました。シスコはそれをみながらどうしてこうなってしまったんですのとむねがくるしくなりました。とめようとしましたが、にひきはどんどんエスカレートするばかりです。
「お前の羽を20本食う!」
「じゃあ私はあんたの尻にひまわりの種入れてあげる! 大好きなんでしょ?」
「あ、あの……」
にひきはとまりません。たいへんです。ものすごくたいへんです。
「一体なんじゃい。騒がしいのぉ」
「ちょうろう様!」
シスコがどうしようかとなやんでいたら、とおくのいえにすんでいるちいさなしろいネズミのちょうろうがてくてくとやってきました。
「大変なんですの! ディエゴさんとロスさんが喧嘩をしてしまって!」
「そうかいそうかい。ふぉっふぉ。わしに任せておけ」
ちょうろうはシスコにそういうと、きたないことばをぶつけあっているにひきのところへとむかいました。こういうとき、やっぱりちょうろうはたよりになってたすかるなと、シスコはおもいました。
「インコはトンビに食われる宿命! それが運命!」
「ハムスター? それってつまりブタのスター? ブヒブヒ泣いて哀れにスタン?」
「まあまあ落ち着きなされ」
いつのまにかラップバトルみたいになっていたにひきに、ちょうろうはこえをかけました。
「ロスや」
「な、何よ?」
「セックスしてくれ」
ちょうろうはロスにけられました。
ちょうろうのちいさなからだがなさけなくちゅうをまい、じめんへとおちました。
「ちょうろう様ぁ!」
シスコがいそいでちょうろうのもとへからだをくねらせむかいました。
ちょうろうのからだは、ぴくりともしませんでした。
ちょうろうは、しんでしまいました。
「そ、そんな! ちょうろう様! ちょうろう様ぁー!」
シスコのひっしのよびかけにも、ちょうろうははんのうしませんでした。みひらかれたちょうろうのあかいめは、どこかとおくのせかいをみつめているようでした。
これはちいさなせかいの、ちいさなちいさなむらのおはなしです。
このむらでは、よんひきのどうぶつが、なかよくのんびりくらしていました。
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