第4話 寛大な都市”アルフェデルム”
門の前には門番兵が二人居た。
俺は挨拶する。
ファム
「…………こんにちは」
門番A
「お?ああ、こんにちは。坊主はどっから来たんだ?」
ファム
「……孤児院、出てきた。」
門番B
「そうか、じゃあこの水晶に触れてくれ。前科がないならいいぜ。」
ファム
「……………(*・ω・)ー○タッチ」
─フワァ…!
門番A
「通ってよし。楽しめよ!」
ファム
「……《─こくん》」
門番A
「なぁ、ヴァンパイアキャットって人にあんなにも懐くか普通?」
さて、やはり最初に行くなれば冒険者ギルドだ。
ある程度依頼を受けたら宿屋を探そう。
あのピラミッドはあくまでもテントだから家ではないし、怪しまれたら色々マズイ。
その後は買い出しをして…と。
よし、今日の予定は決まったな。
…にしても
周りを見渡すと、異種族らしき人々や冒険者らしき人物らもいる。
テンプレ的には異種族を忌み嫌う国もあるだろうが、ここの都市は寛容なのだろう。
だが、冒険者ギルドの場所はわからんから、近くの冒険者らしき人物に話しかけてみよう。
ファム
「………あの」
冒険者
「ん?何だ坊主(スラム街の子供か?)」
※ファムは現在【読心術】を起動していない為相手の考えてる事が解らない。
~スラム街~
貧乏な貧しい人が住むほぼ無法地帯の事。その為、国によっては反社会的存在の人物らや裏商売が闊歩している事もある。
冒険者はわざわざ屈んで目線を合わせてくれた。
ファム
「……冒険者ギルド、どこですか……冒険者に……なりたくて……」
冒険者
「敬語はいらねぇぞ。冒険者になりたいんだな?それなら、今行くところだから案内してやるよ。」
ファム
「………解った。」
冒険者はニコッと笑って快く引き受けてくれた。
冒険者
「ここが冒険者ギルドだ。」
ファム
「……ほぉ。」
冒険者ギルドはとてもでかいレンガ造りのマンション…事務所?みたいな外見で、
どうやら5階建てのようだ。
とにかくめちゃくちゃデカイ。
冒険者の男性が木製の扉を開いた。
冒険者
「ほら、あそこの1番右の一番受付が冒険者登録出来る場所さ。番号が書いてあるだろう?他にも、従魔やパーティの登録が出来る。」
ファム
《─こくん》
この世界の数字は、あのアラビア数字をカクカクにした感じ。
ほら、電子機器…計算機とかに表示される数字の途切れ目を繋いだみたいな。
冒険者
「おーい!”マルシア”、この坊主、冒険者登録したいみたいだぞ。」
マルシア(受付嬢)
「あら”ガレン”、早い帰還ね。お疲れ様。……じゃあ、そこのボクこっちおいで。」
どうやら、俺を案内してくれた男性は”ガレン”という名前で、
受付嬢の名前は”マルシア”のようだ。
ガレンさんは薄い水色の刈り上げ短髪に黄金の瞳、肌はちょっと茶色で腰には短刀。
服装は青い鎧(軽そう)。
よくみれば瞳の瞳孔が縦で耳がほんのり尖ってるから人間ではないな。
マルシアさんは紫のおかっぱ髪にガレンさん同様ちょっと茶色い肌、瞳も同じ黄金。
髪にコブラの飾り付きヘアピン、服装はエジプトとアラブの中間。
さながらクレオパトラだ。
顔つきやメイク?もクレオパトラと言うかあの壁画の顔みたいだし、
だがよくみればまたもやガレンさん同様に瞳孔が縦で耳も尖り気味。
ガレンさんと特徴が似てるし親しそうだからもしかしたら親戚かもな。
砂漠地帯出身なのかもしれない。
右胸にはマルシアとかかれた木製のネーム板。
ファム
「…はい。」
レム
「にゃ~。」
マルシア
「あら?ヴァンパイアキャットじゃないその子。もしかしてボクの従魔?」
ファム
「えっと…友達。」
マルシア
「そっか、じゃあ一応従魔として登録するわね。(ヴァンパイアキャットが人に懐いてるのなんて初めて見たわ……)じゃあ、まず冒険者や魔物にランクがあるのは知ってる?」
ファム
「…はい」
マルシア
「じゃあ、この冒険者ギルド内でのルールや取り決めを教えておくわね。」
ファム
「よろしくお願いいたします…」
教わった事はこうだ。
・冒険者ギルド内での冒険者同士の暴力は禁止(特例意外)
・個人の指名依頼は絶対ではないが、ギルドから冒険者全体への指名依頼は条件が当てはまり次第絶対。
・依頼は失敗しても罰金はなし。但しランクによるが3回~10回ぐらいまで失敗続きだとランク降格。
・よほどの悪事を行った場合は冒険者資格略奪及び追放、軽い場合は最低ランクFから一からやり直し、
等で、マルシアさんによれば、今の規則は冒険者ギルド協会全体の基本的取り決めで、
他の支部によってはその基本的規則に別の規則が付け加えられている場合もあるらしいので注意との事。
後は場所等の案内等は入り口から左手の壁にある案内看板を見て欲しいと言われた。
マルシア
「冒険者になるにはそれなりの試験も必要なの。一般人が冒険者になって怪我をしたらいけないから。依頼試験、実力試験、この2つをこなしてもらうわ。」
ファム
「…成る程」
マルシア
「じゃあ、先ずは実力試験ね。早速試験会場に行くわよ。試験会場はこのギルドの裏手にある訓練場があるわ。ガレン。」
ガレン
「おう。」
ファム
「……?」
マルシア
「ああ、実力試験ではBランク以上の冒険者が試験官をつとめるの。ガレンはAランク。ボクにはちょっとキツいかもだけど、ガレンは確かな”眼”をしてるから。
安心して試験に挑んでね。」
ファム
《─こくん》
ガレン
「よく俺が試験官やるんだわ。ああ、そうそう、余談だが俺とマルシアは兄妹なんだよ。獣人の蛇族。獣人には種類と時たま特性持ちが居るんだ。」
ファム
「─特性?」
やはり二人は兄妹だったらしく、種類はわかるが特性がわからん。
きっと種類によっては特技も違うのだろうが。
マルシア
「そう。私は猛毒のコブラ種。コブラ種は熱帯や砂漠地帯等の暑さに強くて、占いとかが適当にやったやつでも当たりやすく、
猛毒特性は蛇族のコブラ種に現れやすくて毒に強くなったり毒の攻撃が出来るわ。」
ガレン
「俺は氷結の海蛇種。泳ぎや潜水、長く息を止めるとかが得意で寒い地域が得意なんだよ。氷結はそのまんまの意味な。」
ファム
「…成る程…ん?」
でもなんだか兄妹にしては種類が逆じゃなかろうか。
マルシア
「もしかして種類が逆なの気になる?私達は兄妹だけど腹違いなのよ。」
ウフフと笑っておどけるマルシアさん。
成る程。
腹違いなら納得だな。
マルシア
「後は、獣人は必ず変化のスキルがあるのよ。私ならコブラ種だからコブラね。ガレンなら海蛇よ。白と水色のシマシマ蛇www獣人は必ず自分の種類に模した姿になれるの。
あ、間違って狩られる事はないから大丈夫。獣人だって何故か解るらしいのよ。」
ああ、それは良かった。
何故か解らんが。
そして何故にシマシマ蛇のところで笑った?
ガレン
「着いたぜ。」
ファム
「………おぉ。」
見た目はまあ、殆ど古代ローマのコロシアムみたいだな。
的があったり木造人形や登るようの壁らしき物やサンドバッグらしき物があるが、
真ん中にほんのり一段下がった丸い地帯がある。
かなり広い。
ガレン
「あの真ん中で互いに木製の武器で闘うんだ。本物の武器使って怪我したら大変だからな。あ、魔法やスキルは使って構わないぞ。勿論こちら側もな。
使う武器や戦闘方法によっては試験方法も変わる場合があるんだ。そこん所抑えとけ。」
どうやらあの真ん中の地帯が闘技場らしい。
どうやら試験方法が変わる場合もあるらしい。
俺は多分ほぼ前衛の接近戦だな。
結果、ガレンさんは片手剣、俺は鉈。
何故かなさそうな鉈があったので取っただけ。
何故鉈が?
ガレン
「鉈かぁ~。前に鉈を武器にするやつが木製の鉈も何て言ったらしいけどまさかお前も鉈とはな。」
まさかの。
俺はどんな武器を使えるか解らんからとりまボアを倒した時鉈使ってたから鉈選んだだけだけど。
ガレン
「お前それ適当な理由で選んでないか?自分がどんな武器に一番向いてるかちゃんと試しておけよ?」
言われた。
まあ、別に構わないのだが……
マルシア
「頑張ってね~!」
レム
「みゃ~みゃ~!」
マルシアさんはレムを抱っこしながら手を振っている。
ガレン
「子供だからって容赦はしないからな?………では…行くぞ!」
ガレンさんが踏み込み跳んだ瞬間物凄い爆発音が響き、姿が歪んで掻き消えた。
いくら何でも本気過ぎやしないだろうか?本当にこれで力が測定出来るか?
俺は咄嗟にあの時(ボア退治の時)のように垂直に大きく飛翔した。
ガレン
「は?」
一瞬気の抜けた声が聞こえたが、すぐさまガレンさんも飛翔して来た。
やはりAランクとだけあって身体能力が並じゃないな。
俺はガレンさんが跳んで来た所で脳天に鉈を叩き込む──
ガレン
「うぉっと、そう簡単にはいかねぇぞ」
前に真剣白羽取りで止められた。
まあ、それ自体は別にいい。
力ずくで鉈を引き抜いて?【飛行】で飛びながら距離を取った。
ガレン
「ちょい待ちお前【飛行】持ち!?タンマタンマ!その戦闘方法だと別の奴じゃん!」
どうやらスキルによっては試験官も変わるようだ。
ガレン
「マルシア!”ペリドット”呼べ!」
マルシア
「解ったわ。」
ファム
「……ペリドット?」
ガレン
「俺のパーティ仲間。魔法と槍を使える獣人の鳥族。豪嵐のツバメ種だからかなり速いんだぜ?今日は皆バラバラで依頼受けてる途中だったんだよ。
昼間にはギルドで待ち合わせだからもうそろそろ戻って来てる筈だぜ。ああ、因みに豪嵐はかなり珍しい特性でな!嵐とも勝らない暴風を扱える風魔法の上位みたいなレア特性さ。
レア特性の奴はめったにいない。」
成る程。
マルシアさんはレムを抱えたままギルドの方に走って行った。
数十秒後、マルシアさんが1人の男性を連れて来た。
そして何故かレムの首に青紫のコブラが巻き付いているがレムは気にしてない。
男性は、濃い緑のウェーブした髪の毛に、右目が前髪で隠された銀縁丸メガネの失礼ながら陰キャっぽい男性で、
背中には(外側)緑と(内側)白のツバメの翼と尻尾?があった。
瞳は明るいミントアイス色で手には青い宝石が刃?の部分に付いた杖にも槍にもなりそうな……
スタッフと槍が融合したような形の武器が握られている。
ペリドット
「やぁガレン、君が居ないから探してたんだよ。また試験官してたらしいけど…」
間延びしたゆったりとした喋り方で、俺に視線を移して来た。
ペリドット
「こんにちは。僕は”ペリドット”だよ。君かな?希少な【飛行】を持ってるのって。」
ファム
《…………─こくん》
ペリドット
「宜しくね。にしても、君がヴァンパイアキャットの子供…しかも変異種を従えてるのねには驚いたよ。ヴァンパイアキャットは人に絶対懐かない事で有名なのに。」
え?懐かないのか普通?図鑑には載っていなかったがな……
俺は首にコブラが巻き付いたレムを見た。
と言うかそのコブラは?
マルシア
「あ、この子?このコブラは私の従魔の”リリシィ”よ。いつも私のカウンターの影でトグロを巻いてるんだけど、レムちゃんに興味があったのかは解らないけど、
レムちゃんをカウンターに乗せてた間にいつの間にか首に巻きついてたのよね。」
ああ、成る程な。
俺はレムの首に巻きついているリリシィを人差し指で撫でた。
嬉しそうに指に頭を擦りつけてくる。
マルシア
「あら珍しい。リリシィは人見知りなのに。」
ほう。
ガレン
「俺やペリドット達でも懐きにくかったのにな。」
ガレンさんが頭を撫でようとすると少し頭を引っ込めてから撫でられた。
どうやら本当に人見知りらしい。
ペリドット
「じゃあ…そろそろ試験を再開しよっか?」
マルシア
「あ、そうね。」
ガレン
「頑張れよ坊主。」
レム
「みっ!」
リリシィ
「シャッ!」
レムが万歳のポーズで応援してくれた。
リリシィもそれに合わせて体をぐんと伸ばして応援?してくれているようだ。
そしてペリドットさんはもうすでに闘技場で右手にスタッフ左手に槍を持って手招きしている。
成る程。
ペリドット
「じゃあ~……始めようか」
ファム
「……ん」
互いに武器を構えて…駆けるッッ!!
─ガキンッッ!!
─ガキキキキキキキガキン!!
ペリドット
「うそぉ?君ホントに人族~?これは本気で戦わないとかも~……ハッッ!」
さっきよりも身体能力が倍に引き上がった。
これは確かに本気だろうな。
だが俺は何故か総合レベルが5000なんだよな。
その証拠に、ペリドットさんの動きが遅く見える。
俺……人間じゃないみたいだけど、本当に何族なんだろう?
その後も交戦し続け………
…………結果
ペリドット
「──はぁ…はぁ………僕の負けだよ。」
ガレン
「うぉおお!マジか!」
マルシア
「これは凄いわ。貴方のご主人、とっても強いわね?」
レム
「みゃっふ!」
ファム
「ふぅ…………(…全く疲れてないな…【疲労抹消】のおかげか?)」
ペリドット
「いい勝負だったよ。」
ファム
「……ありがとうございました……」
俺とペリドットさんは固く握手を交わした。
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