第22話 街道
街道というには整備のされていない、畦道のような地面。しかし、それはあまりにも不自然に目の前に横たわっている。
「お、着いたな。」
現代の日本や各国首都のように整備こそされていないものの、獣道と呼ぶには人の手が入っていることが分かる、そんな道だ。
草は生えておらず、時折潰されているのだろう。小石の転がる地面には車輪のような跡も見られる。
うん、間違いなく道だ。それも、使われている道。
「う〜ん、見渡す限り草原と森、って感じだね……人の気配もなし、か。」
「ま、そう都合良くはいかねぇよな。」
「だよねぇ。で、治が見た人はどっちに向かってったか分かる?」
馬鹿にしてんのか?とジロリとこちらを睨む。
いえいえ、ただの確認ですとすましているとふっ、と短いため息をついて一方を指差した。
「森が向かって左手だったから、こっちだな。」
「じゃ、そっちに向かいますか。」
お金とかは道すがら、追々考えていこうと話しつつ、兎にも角にも街へ向かって歩き出す。
奏も転生系の小説を知ってたし、おそらくセオリー通り近隣の街に向かうだろう。上手く行けばこれから向かう街に居るかもしれないし、居なくても連絡手段なりを探してみようと思う。
「どれくらい歩くかな……あんまり長すぎないといいけど。」
「なんだ、さっきのアレで疲れてんのか?」
意外そうにそう問われ、言われてみれば1時間歩き通しだった割にはあまり疲れておらず、足も痛くないことに気づいた。
「や、あんまり疲れてない……なんでだろ?」
首を捻るが、心当たりと言えばこの新しい身体くらいだ。運動神経だけじゃなく、体力的にも変化があったのか。流石にそれは自己認識の時には分からなかった。
「俺も徹夜の割には疲れてねぇんだよな。そこまで眠い訳でもねーし。」
「お互い、前と身体が全く違うもんね。そもそも私たちって人間扱いなの……?」
「動物扱いとかだけは勘弁して欲しいところだな……。でもま、最初に会った奴は俺らと同じような感じだったけど、ちゃんとしてたぜ?」
少なくともペット扱いって感じじゃなかったな、と過去を思い出しながら治が言う。
それならまぁ、奴隷とか魔物的な扱いではないんだろう。少し安心した。
──もし奴隷やら魔物やらのカテゴリに分類されるなら街に行くのは危険な賭けだったから。
けれどよくよく考えてみれば、結木がそんなことを言っていた気がする。神様と神様が作った種族とかなんとか……。
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