第21話 森を抜けると、そこには
腹拵えも済み、いざ森を抜けようと歩き出した私たち。
なんやかやと無駄口を叩きながら、治が向かってきた方向へと進んでいく。
「──にしても、あれ以降よくわかんねぇ生き物……生き物? 見ねぇなぁ。」
言われてみれば、確かにそうだ。
治の顔面にぶち当たったあのスライムもどき。アレは一体何だったのか?
わからないことが多すぎる。やはりアルデヒルデも結木結も、不親切すぎやしないか。いや、もうそんなこと分かりきっていることではあるんだけれども。
「あれ、一体なんなんだろうね。生き物なのかすら分かんないけど……」
「ま、会わねぇに越したことはないよな。気持ち悪ぃし。」
同意。アレは本当に気持ち悪かった。今思い出してもぞわぞわする!
尻尾の毛が逆立ってしまいそうだ。
「お、見えてきたな」
そんなことを話していると、かなり遠くの木々が少し開けているように見える場所まで進んできていた。
湖から歩いて1時間ほどだろうか?
「誰かいるかな? 居なくても街まで行けそうだよね。」
ちょっとウキウキしてしまう。もちろん奏を探すという目的は忘れていないし、最終目標は神様と結木をぎゃふんと言わせることなのは変わってない。
でもやっぱり、小説漫画好きとしては抑えられない好奇心というものがあるものでして。
異世界の人や街、種族に言語──。結木が使っていた魔法陣みたいなものが一般的にあるのか、魔法が使えたりするのか?
種族によって魔法が使えなかったりするのか、そもそも言語は一緒なのか。
結木は日本語だったし、今私と治が話しているのも日本語のつもりだ。少なくとも日本語で話しているという意識はある。自動翻訳のようなことになっているのか。そうだ文字、文字は?
考え出したら止まらない!
「おい、おーい、茉莉!」
「ひゃいっ!」
ぺしこんと頭を叩かれて、ようやく意識が現実を向く。
「ご、ごめん……考えごとしてた……」
「だろーな。また意識飛んでたし。」
もちっと意識こっちに向けとけ、と怒られた。
ごもっともである。
「や、街に行くとなると色々考えることもあって……お金とか、宿とか」
するりと口から出たけど、確かにお金とかどうしよう。冒険者ギルドみたいなのとかあったりするのかな?それとも役所?
え、何て言うの?難民です?それとも記憶喪失……2人揃って?
うーん、本当に考えることが多い。やることも多そうだ。
「そりゃ確かに大事だけどな、まずは街に着くところからだろ?」
確かに。
街につかなければ全て空想の産物でしかなく、すぐには役に立たない考えばかりだ。
「そだね、さっさと森を抜けちゃおう」
「おー。ま、もう目の前だけどな。」
そう言った治の視線の先には、高く聳える木々のない道が広がっていた。
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