第20話 朝を迎えて
いつの間にかしっかりと寝てしまっていたようで、目に穏やかな光が差し込んできた。
意識が浮上したときには既に朝。といってもまだ日が昇ってきたばかりの早朝だ。少し肌寒く感じ、ふるふると身震いをする。
耳がこそばゆくて、頭を横に振る。ぱたた、と音を立てた耳が、別の音を捉えた。
忙しなくぴいぴいという小鳥の声と、それを追っているであろう大型の鳥の羽音だ。上空を見上げれば、このひらけた湖付近の空を小鳥と大型の鳥が追いかけっこをしている。大型の方はまだ飛び慣れていないのか、逃げる小鳥を追い大きく旋回したり、小鳥に追いついても上手く捕まえられずに逃げられたり。人間並みの大きさの鳥だからか、小鳥に良いように翻弄されているようだ。
「へたっぴだなぁ……私ですら魚が取れるのに。」
「そりゃお前は前と違って身体能力がかなり上がってたからだろ」
冷静なツッコミである。
「はいはい、そうですよね──おはよ、治。」
「おう」
未だ燃えている焚き火をつついている治が私の独り言に対してつっこんできた。
それにしても、ずっと起きていたのだろうか。見張りは交代するって言ったのに。
「まさかずっと起きてたの? 起こしてくれれば見張り代わったのに……」
「──熟睡してたからな。起こしたところで起きたかどうか。」
少し言い淀んでからそう言われる。
その後冷やかすように、またなんか投げつけられても嫌だしな、と鼻で笑った。
まだ根に持たれているようだ。ちゃんと謝ったのに、嫌味ったらしいったらない。
「あっそ。ま、いいけどさ……」
「じゃ、朝飯食ったら動くか?」
「そうだね。日が出ているうちに動いた方がいいし。」
冒険の鉄板である。
特に何の装備もない私たちにとって、食糧も火種も得られないような場所で日暮れになってしまうのだけは避けたいところだ。
「治が会ったって言うような、親切な人に会えるといいんだけど。」
また湖に潜って魚を捕り、素焼きにして朝食にする。昨日魚を獲ったことでコツを掴んだからか、今日はすいすいと魚を捕ることが出来た。
洋服の水気を絞り、全身を震わせる。治が小声で犬みてぇだと呟いたのが聞こえたけれど、じろりと睨むに留めておく。
喧嘩を始めると出発が遅れて面倒だし。
「ま、どうせ今は猫みたいなもんだしね」
聞こえないようにそう言い訳をして、魚を焼いている焚き火の熱で服の水分を少しでも飛ばしておく。
うん、魚の油が焼ける、いい匂いがしてきた。
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