第18話 《《能力》》

治が火起こしに奮闘している間に湖で採ることができた魚を、ようやく燃え上がった火で丸ごと串焼きにして、それを頬張る。

ふむふむ、淡白な川魚といったお味である。


「結局、なんだかんだ全部お前に頼ってんなぁ……」


ぐあ、と大口を開けて野性的に魚に食らいついた治が、魚を咀嚼しつつそうぼやいた。


「別に、適材適所でしょ」


なんか気恥ずかしかったのでそう言ったのだけど、治は無言でチラリとこちらに視線を飛ばすとまた魚を頬張った。

暫く無言で、お互いに黙々と魚を食べる。


「にしても、《戦うちから》って結局なんなんだろうな?」


「う〜ん……」


唐突にそう言う治。お腹が膨れて落ち着いてきたからか、そう言われてようやく、私もそこに考えが向かう。

自称神様に与えられた、私たちが望んだもの転生ボーナス

治が神様から与えられたその能力に関しては、わからないことが多すぎる。本当に何もわからないから、どう考察しても机上の空論でしかない。


「この姿はだとは思うんだけどな……これだけ、ってことないだろ? ……ない、よな?」


「そのせいではあるとは思うけど……。だとすると私がこの姿なのもおかしいんだよね」


「そうなのか? てっきり運動神経でも願ったのかと思った──って汚ぇな!?」


私はそんなもの願ってないという抗議として食べ終わった魚の頭を治に向かって投げつける。

確かに私は元々運動音痴ではあったけれど、転生ボーナスなんていう大事なものにそんなつまらないことを願う訳がないだろう。まぁ、大事なことを願うなんていう知恵があるのは異世界転生系の漫画や小説を知っていないと難しいだろうけど。


は純粋な力、ってことなのかな……?」


転生ボーナスにしてはしょっぱい。

けれど、それだけだと言われても納得してしまうのは結木の雑さとアルデヒルデの淡白さのせいだろうか。

なら、私の願いはどうなったんだろう。

私のあの願いが、まさか運動神経になったなんてことがあるはずがないのだけど……。


「そーいや、お前は何願ったんだ?」


「え」


こういうのは伝えても良いものだろうか?なんて考えが頭を過ぎる。

治は友達だし、悪い奴じゃない。喧嘩っ早いだけで、公平の友達で、良い奴だ。

分かっては、いるんだけど──……


「……あー、いや、悪い。なんでもねぇ」


少し言い淀んでいると、治は困った顔で首を振った。


「あ、や、別に……その、隠すことでもない、んだけど」


と、慌ててそう言うが、治はそれを遮って


「いや、言いたくねぇ事もあんだろ。言いたくねぇなら言わなくていい」


と重ねて首を振った。

気を遣わせてしまった。ちょっぴり罪悪感が残るが、せっかくの配慮をありがたく受け取る。

黙ってこくんと頷くと、頭の上で耳が揺れた。

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