第13話 茶藤治の足跡
私は猫耳が似合うような可愛らしい顔つきではない。
自分で言うのもおかしい話だが、元の顔つきはブサイクというわけではなかったはずだ。ただ、中身に伴っていないというか性格に合わないというか……
「いやまぁ、悪くねえとは思うけどな?」
「うっさい! 黙れ馬鹿!」
「あ"ぁ"!?」
精一杯のフォローであろう言葉に、だから言うなと言ったのにと言う気持ちを込めて言い返す。それをきっかけにぎゃいぎゃいと言い合いをして、私の息が少し上がってきたところでお互いが冷静になって、どちらからともなく黙った。
「……で、お前一人だったのか?」
「どういうこと?」
その言い方だと、治は一人でなかった?もしくは、私の周囲に誰かがいたのだろうか?
その疑問が猫耳の似合わない顔に出ていたのか、治がそれに答えた。
「俺は目が覚めた時、全く知らん奴に話しかけられてたんだよ。お前と同じように頭に耳生やした奴にな」
少なくとも俺は知らない顔だった、と言う治。しかもその獣人はおそらくこの世界の元々の住人だろうと言うのだ。
「俺が見知った顔だったから、じゃなくて純粋に森に近いところで倒れてたからだ、っつーお人好しな奴だった。茉莉に会って分かったけど多分、顔の造り自体は前と変わんねぇんだろ?」
「うん、少なくとも私にとって治は今までの顔つきと一緒。違うところも多々あるっちゃあるけど……」
「そりゃお互い様だ。とにかく、そう考えても知らねえ奴だったんだ。んで、森の方でな〜んか気配がしたからそいつの誘いを蹴ってこっちにきたんだ。気配がする方に向かって歩いてきたら、なぁんか知ったような声が聞こえてなぁ……もしかして他の転生者かと思って近づいたらキッショいスライム? の攻撃を受けた」
「いや、人がいるとは思わなくて……その件はごめん……」
ギロリと睨まれたので、偶然の出来事とはいえ謝っておく。
本当に誰かいるとは思わなかったわけですし……?
でも、そこまで話を聞いてわかった。すでに誰かと会っていたから、ここがゲームではないとすぐに納得できたんだろう。
「ま〜時系列照らし合わせても、こっちに来た時間にそこまでのラグはねえみてーだな」
「同感。治のがちょっと早かったっぽいけど」
「で、だ。これからどうする?」
早々に転生者と巡り会えた奇跡は大きい。何をするにしても、同じ事情を知っている者同士が協力できるのは、大きなアドバンテージだ。
「私的には、どうにかして奏と合流したい、かな」
「ま、仲良い奴と合流してぇってのは分かる。けど、それ難しい上に必須か? 別に近いうちにでいいだろ」
俺もできることなら公平と合流してぇけど、と言う治に、チッチッチと指を振ってみせる。
「奏ならさ、あのくそったれの神様とか結木とかに一泡吹かせる作戦とか──」
立てられそうじゃない?と言う言葉までは、言わせてもらえなかった。
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