第12話 《こう》なった

グッと全身に力を入れ続けていたことに気づいたのは、体の力が抜けて地面にへたり込んで座ってからだった。

ようやく自覚したその事実に、やっぱり私はまだまだ冷静ではないようだ、とガクガクと震える足を押さえつけて深いため息をついた。


「…………」


困ったように無言で佇む治。

急に私が座り込んだことで、どう反応したら良いかわからなくなったのだろう。


「とりあえず、首痛いから座ってくれる?」


と声をかけると、素直にそれに従った。

地面にあぐらをかいた治だが、それでもやっぱり顔を見るには見上げなければいけなかった。

暫くは首の痛みと戦わなきゃいけないかもしれない。


「……あ〜……おぅ……」


こちらを見たと思ったらふいと視線を逸らす治は、未だにベトベトが残る髪をわしわしと雑に掻きむしった。

視線の先にあるのは──


「こんっな時に余裕あるねぇ!?」


がっしと慌てて服の胸元を掴んで引き上げた。

引き上げたところで、そういえば洋服も違うし、お互い全裸とかでなくてよかったなぁなんて考えが浮かんだ。


「余裕はねぇけどな……で、どうなってる?」


未だそっぽを向いたままの治がそう呟く。

私は、神様がゲームの画面っぽかったこと、神様との対話?らしきこと、目覚めてからの時間のことを説明した。


「あ"〜、そりゃ俺も同じヤツに会ったな。アルデ……なんとかだろ?」


アルデスメロン?と首をかしげる治に、アルデヒルデね、と訂正した。治は、あ〜そうそうと言いながら、話を続ける。


「俺との時はもっとあっさりしてた気がするけどな、そいつで間違いない。俺も最初ゲームのプロモかなんかかと思ったしなぁ」


うんうんと目を閉じて納得したように頷く治だが、よくもまあそんなにすんなりと納得するものだ。


「俺は《戦うちから》を望んだ。生きてくには必須だからな。そんで目が覚めたらなってた」


これな、と額に生えているツノを指差す。

まじまじとそれを見ていると、向こうも私の耳に注目しているのが分かる。


「私はなってた。鏡も何もないから、実際に見たわけじゃないけど……」


「こうなってくると、異世界だって言われても納得するしかねぇわな。……つーかお前、猫耳って──」


「あ"〜言わないでっ! 分かってるから!」


私のことが分かるってことは、おそらく顔貌に関しては治と同じで前のままだということだろう。つまり──


「「究極的に、似合ってない」」


「って言うんでしょ……」


ボソッと告げられたその言葉は予想範囲内のお褒めの言葉だった。

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