第11話 こんな再会ってアリ?
尻尾を振り回したせいでバランスが崩れたのだ。
「ああもう最悪っ!!」
先程より低い位置からの落下、ということもあってか、叫ぶのではなく独り言を言うくらいの余裕はあった。
くるり、と一回転しながら体勢を立て直し、普通に階段の三段目から飛び降りたくらいの気持ちで片足で着地する。階段三段目の時と違い足に痛みや痺れがくることもなく、体的には階段一段目から飛び降りた程度のものだった。
実際には、さっきより低いというだけで二階建ての屋根くらいの高さがある枝からの落下だったのだけど……
「やっぱ猫、かぁ……。犬じゃこれはできないよねぇ」
独り言を言いながら尻尾を揺らしてネバネバを取ろうとするが、厄介なことに揺らした程度ではネバネバが取れない。
「あーもう気持ち悪いなああ!」
気持ち悪いが怒りに切り替わり、尻尾を掴んで痛くない程度に振った。さっきのスライムもどきほど重量がないからか、スライムもどきより早いスピードで虚空に向かって吹っ飛んでいくネバネバ。
──べちゃっ
虚空に向かって飛んで行ったのに木にでもぶつかったのか、と思ったよりも近い音のした方に目を向ける。
そこには、木ではなく……スライムもどきを手にしたガタイの良い男が立っていた。
「……え」
なんの偶然か、顔中がスライムもどきの粘液でベトベトになっていて、顔がわからない。
いや、まぁ、うん。
分かります、分かってますよ?
だからそんなにブルブル肩とか震わせなくても──
「っにしやがんだテメェ!!!」
顔中に粘液を貼り付けたまま、手にしたスライムもどきを地面に叩きつける男。
「気配がする方に歩いてきてみりゃあさっきからべちゃべちゃと人様の顔に向かって気持ちわりぃもん投げてきやがって!!」
喧嘩なら買ってやると言いながらガシガシと着ていた服で顔を拭う男。
顔を拭ったことで、髪に隠れていた角と思われる黒いものが額から突き出ていることが分かる。
でもそれよりも、この聞いたことのある声に、私はあっけに取られて怒鳴られるままになっていた。
だって、この声は、転生する《ここにくる》前にも聞いた──
「治……?」
結木の挑発にあっさりと引っかかった、馬鹿みたいに煽り耐性のない治の声だ。公平とよくつるんでいたことで接点が生まれた、数少ない男の友人。
「あ"?」
顔を拭っていた手を止め、顔をしかめた男は眉間にしわを寄せてこちらを見た。
ようやく見ることができたその顔は、やはり紛れもなく治だった。
──その額に生えた角と体色を除けば。
いや、それだけでなく身長もぐんと大きくなっている。私が小さくなっているだけなのかもしれないけど、190センチ前後で元々大きかった治がさらに大男になっている。
「……茉莉、か?」
その一言で、全身の力が抜けた。
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