第7話 転生の瞬間
「うんうん! いいねいいね!」
嬉しそうに拍手する結木。拍手につられて教室に残っていた全員が結木の方を向いたところで、結木はふうとため息をついた。
「うん、ちょうどいいし、そろそろ締め切っちゃおうかな〜!」
「え、締め切る……?」
おどおどと結木を見た男子は、結木と目が合うと慌てて目をそらしていた。ええっと、名前は確か──
「ある程度転生していったし、内緒話の君たちも転生するっていうならもういいかなって!」
考え事をする私なんて歯牙にもかけず、また作ったような笑顔でそう宣言した結木。結木が指を鳴らすと、転生を宣言した私たち以外の体が緩やかに泡になっていく!
「うわ、うわわっ!」
結木から目をそらした男子が、消えていく自分の体に慌てて手を添える。消えていく足を押さえているのだろうか。
「はいはい! 度胸のないチキンどもはもうい〜らない! バイバイ〜」
「あぁ? 熟考する奴がチキン? テメェの目は節穴かよ?」
はん、と鼻を鳴らして腕を組んだ男──
ぴくっ、と、分かりやすく肩を跳ね上げて反応した結木。一瞬真顔になったものの、すぐにまたあの笑顔に戻って、
「いざって時に考えてるだけで死ぬバカより即断即決即行動! ──の方がマシってもんじゃない〜? あっ、自分が本当はチキンだから本当のこと言われて怒っちゃったぁ? ごめんね〜!」
「っんだとゴラァ! 上等じゃねーか転生してやんよ!」
あっさりと挑発に乗った治。こいつは普段冷静で話せばわかる男なのだけれど、こうした煽り耐性がゼロなところが残念だ。
転生を表明したとたん、泡になっていったはずの治の体が元に戻った。それを見た3人の男子が、また転生を決めた。
「これで決まったね! 今回は大収穫だな〜ボーナスあるかも〜! じゃ、いってらっしゃ〜い!」
結木の言葉に黒板が光を増して輝く。視界の全てが白く塗りつぶされて──。
誰かに、手を握られた気がする。
そんな感覚もぶつりと途絶えて、自分の体の感覚なんてなくなって、真っ白な光の中で。
ゲームのロード画面のような表示が、視界に広がった。
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