第4話 選択

「なんであたしたちがそんなことしなきゃいけないのよ!? バカなんじゃない!?」


「そ、そうだよぅ……わたし、死にたく、ないっ」


赤峰がそう叫ぶと、赤峰とよく行動を共にしている女子も泣きながら結木にそう言った。

だが結木は、そんなことは聞いていないとちらりと二人を一瞥して、またクラス全体に聞こえるように、


「さぁ! 消滅か、転生か! 選ぶのは君たちだ! なんちゃって〜」


くすくすと楽しそうに笑う結木は、神の使いなんかより、悪魔の手先だと言われた方がしっくりくる。

何が、楽しいのか?何が、面白いものか?


「消滅を選べば、最初のやつみたいにすっと消えておしまい! 転生するなら、この穴に飛び込めばおしまい! さっさと決めてね」


「なぁ、消えるとどーなるんだ?」


教室のはじ、男子の陽キャグループがたむろするそのスペースにいた男子が、結木に向かってそう言った。

新城葵しんじょうあおい。結木の話にも動揺せず、割と平然と教室を見ていたようだ。


「ちょっと、葵!? あんた──」


「消えるだけだよ〜? 何にもなかったことになるだけ! あ、体は残ってると思うけど……」


赤峰の言葉をスルーした結木は新城の疑問にだけ答えた。

なるほど、結木は『自分の意に反したことを嫌うだけで会話は通じる』のか。そんなことを考えていると、女子を慰めていたはずの奏がいつの間にか私のそばに来ていた。


「ねぇ、茉莉まつり……どうする?」


どう思う、ではなく、どうする、か。

今の奏は思ったよりも冷静で、冷徹なようだ。いつもの奏らしい、とも言える。


「そう、だね……奏は、どう考えてる?」


と、言おうとした。

口を開いた次の瞬間、新城がつかつかと黒板に向かって歩きながら大声で言った。


「よっし! 俺、転生するわ!」


その言葉と、私の言おうとした言葉の出だしが被って、思わず口を閉じた。

少しだけ舌を噛んでしまった。痛いなぁ、もう。

──って、え?

転生、するんだ?


「お〜! 転生第一号だねぇ! ぱちぱち〜!」


にこにこ笑顔の結木が、口でぱちぱちと言いながら手を叩いた。


「決断力のある子は好きだよ〜! 一番乗りのきみ! きみみたいな子なら、神様が会ってくれるかもね〜! もし会えたら転生後無双できるチート能力をもらえちゃうかもしれないよっ! 頑張ってね! じゃあばいば〜い!」


結木は手を叩きながら早口でそうまくしたてて、黒板の中心に空いた小さな光の穴へ新城を押し込んだ。

新城は何かいう暇もなく、光に吸い込まれていった。

ひぃ、と誰かが小さな悲鳴を上げる。


「あっ、そうだ、いうの忘れてた!」


「……は?」


「神様は全部で4人! 正確には4柱って言うんだけど〜……、で、どの神様の種族に生まれるのかは運と神様の気分次第!」


新城がいなくなってから明かされる新事実に、思わず閉じた口が空いた。

神様、複数いるの?え?今更そんな事実言うの?


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