第2話 神様のお使い
「か、神の使い……? 何言ってんの、あんた……」
恐る恐る、でもしっかりと結木の顔を見ながら、クラスの女子の陽キャグループのリーダー、
クラス全員の総意であるだろうその言葉に、結木がくるりと指を振って答えた。
「そのまんま、私は異世界の神様の下僕なんだ〜! びっくりした?」
「びっくり、ってか……え? 異世界って……」
「ま、普通そういう反応だよねぇ。でもさっきみたくうるさくないからそれでいいや! あ、でもさっきの奴は詳しそうだったな? 惜しいことしたかも?」
ま、怒られなきゃそれでいいや〜!と自己完結する結木に、もう誰も話しかけようとはしない。
言われた言葉を理解しようと、皆必死に頭を回転させていることだろう。かく言う私も、現状を理解しようと必死に考えをまとめようとしていた。
ただ、みんなよりも少し、そういった話に聞き覚えがあったから、パニックにならずに済んでいるだけなんだけど。
「さてさて! ではみんなに改めてお話をするね〜! さっき邪魔されちゃったしっ」
んん、とわざとらしい咳払いをした結木は、黒板に手を当てる。
すると、結木に触れられたところから黒板が真っ黒に染まっていく。深緑色の黒板と白のチョークで描かれた文字と絵が消えて、真っ黒になった黒板に、どうやってか映像が映った。
──ザザッ
テレビの砂嵐のような演出ののちに、黒板には結木が映った。
『あ、あ〜。マイクテス、マイクテス……オッケー? うん』
「いや〜懐かしいなぁ、照れちゃう!」
くねくねと体を揺らす結木。懐かしい、と言うことは、おそらく過去の結木なのだろう。画面の結木はこちらの斜め上──おそらく録画機器の後ろ──に向かって頷くと話を始めた。
『私の名前は結木唯。地球の、日帝国、首都ミカド出身。17歳。今、私たちは、戦争の最中で、これを記録している。これを見た、人か何かもわからないあなたに頼むのはどうかしていると思うけれど、それ以外に方法がないから。』
黒板の、過去の結木がすうっと息を吸った。
『私たちは、神と名乗る人外から攻撃を受けて、おそらく、世界は死ぬ。あいつらが何をしたいのかわからないけれど、これは事実。だから、どうか──』
そして、また砂嵐に埋め尽くされる黒板。一瞬ののち、また結木が映った。
『そんな訳で! 私は一度死にました〜! びっくりした?』
「えへへ、私、転生させるときは絶対これ流すって決めてるんだぁ」
ニコニコした結木と、黒板に映る真剣な顔の結木が、声を揃えて
『「神様に殺された私は、神様の下僕として転生しました! そして今、あなたたちを転生させます! 死んだ世界に!」』
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