第24話 姫、エイダとの戦闘

「わらわは魔法幼女エイダなのだわ」

「この魔法の里に希望をもたらした光の存在なのだわ!」

広角を上げ、低く呟く。

「そして、絶望も与えた闇の存在。」


彼女は困惑している私達をよそに話し始める。

「でも、わらわが眠ってる時にガーデンベルクのおっさんが、封印してきたのだわ。」


エイダはイザベラを見て感謝する。

「おっさんの末裔よ。謝意を述べさせて貰うのだわ。」

「ようやく、わらわの夢が叶うときが来たのだわ。」


「始めるのだわ。 復讐を!!」


彼女の言葉を号令に雷が辺りに降り注ぐ。


イザベラは束ねた雷の矢を空に放つ。

「はぁ!」


雷は互いに相殺し合い、静寂が訪れる。

「なかなかやるのだわ。」


(マズイわ! 2回しか弓を引けない彼女が攻撃ではなく、防御の為に一度引いてしまったわ!!)


私は彼女を一瞥する。

「すまない。咄嗟に撃ってしまった.....。」


首を横に降り、言う。

「いいえ、助かったわ!」

「ありがとう」


彼女は微笑を浮かべ、直ぐに視線をエイダへと移す。


エイダは挑発気味に告げる。

「攻撃なさってもよろしいのだわ。」


(攻撃したくても、それが出来ないのよ!)

(イザベラはあと一回しか魔法を使えない.....。)

(かと言って、ミレーナは攻撃力が低すぎる...。)

(.......残ってるのは......)


両サイドからの視線に気づく。

「私!?!?」


二人は頷く。


「嫌だ! なんか、怖い!!」

「あの子、ちっちゃい癖に物凄い魔法撃ってくるじゃない!!!」


今更気づいた。

私達のパーティはアスタ無しでは何者とも戦えないと。


私は猫耳エルフに顔を向け、笑顔で言う。

「ミ、ミレーナこそ、攻撃してあげなさいよ!!」

「にゃあ!?」


仰天している彼女に追い込みをかける。

「その長い爪なんて、引っ掻くのに適してそうじゃない?」

「こ、この爪はにゃたしの大事な身体の一部にゃ!」

「命より大切なのにゃ....!」


ミレーナはイザベラを見る。

「イザベラの弓って.....叩くと凄く強そうにゃ!」

「ん? はぁ!?」

「行くのにゃ!」


彼女は顔を紅くし叫ぶ。

「弓は引く為の道具だ!」

「その他の用途に使わせるんじゃないよ!」


彼女の威圧に涙を目に浮かべる。

「にゃぁ.....」


私達を見かねたエイダが声をかける。

「早く攻撃してくるのだわ。」


しかし、私は彼女を無視し、二人に言う。

「じゃんけんで決めるわよ!」


ミレーナは腕を回しながら言う。

「負けてもなくにゃよ!」


私とイザベラはミレーナをしっかりと見る。

「望むところよ!」

「あんたこそ泣くんじゃないよ!」


エイダは小さな右手を私達の方へ差し伸ばす。

「ちょっと.....攻撃を.....」


「行くわよー! じゃんけん!!」


「ほい!」 

「にゃ!」

「はぁ!」


「攻撃してよ.......」


「やったにゃあ!」

「ミレーナよくやった!」

二人はハイタッチを交わした。


(負けちゃた.....。)

(自分で言い出したんだから、引くわけには行かない....でも......!)

私は奥で未だ立っているエイダを見る。

(それでも、怖いわ!)

(絶対負けるじゃない!!)



突然、古の魔術師が絶叫する。

「あああ!! もう!!」

「身体がうずくのだわ!!!」

「わらわの身体に攻撃を当てて、この火照りを鎮めるのだわ!!! 早くぅ!!!」


両手で身体を締め付けながら、懇願する声色を出す。

「魔法で焼くなり煮るなり!」

「刀で刺突するなり! 斬るなり!」


「わらわを傷つけるのだわ!!」



「は?」

「へ?」

「???」

私達3人は頭を掻きむしるエイダを見て、声を漏らした。


(もしかして、彼女はとんでもない"癖"を持ってるのかしら?)


「わらわの名はエイダァ!」

「ドMのエイダなのだわ!!!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る