第20話 アスタ、情熱の鼓動3

山菜採りのエルフと出会った一週間後、彼らの長が我が家を訪ねた。

どうも、山で生活していることを黙認している、じっちゃんに感謝しに来たらしいかった。


お礼に出来る事ならなんでもする。

と、長は言った。


俺は

「剣術を教えて欲しい!」

と懇願した。


彼は少し困った顔をしたが、了承してくれた。



「アスタよ。 自分の命と、他の命。」

「どちらが大切だ?」


俺は答えに迷う。

「えっと.....」


師匠の長い髭に覆われた口元が動く。

「正解などない。」


「では、自己犠牲についてどう思う?」


俺は言う。

「大切な人を守る為ならいいんじゃあねぇか?」


彼は確かに....と静かに言う。


「自己犠牲の精神はヒト特有の能力だ。」

「しかし、達成には想像もつかない精神力が必要になる。」


「死の恐怖はヒト、エルフ、魔物、全ての動植物にある。」

「それを克服する為には強大な精神力が必要だ。」


「お前にその覚悟はあるか?」


「.......はい!」


「私が教える最後の技は、正に最期の技だ。」


「命の灯火が消える時」

「お前の気力、精神力が限界まで高まった際に使え。」




ーーーーー

「師匠、見てて下さい。」


斜めがけの鞘を捨て、長に教えてもらった構えをする。


(ケーネ達3人を守る!)

ぼやける視界でガラナの姿を捉えた。


精神を神経網を通じさせ、全身に巡らせる。

(一撃。 奴に一撃だけでも!!)


精神力が溢れる。

身体から青色の炎が上がる。


師匠に教えてもらった最期の剣技。


命を削り、放つ。全身全霊、最期の技。


(生命を! 夢を! 情熱を燃やせ!)

(爆発させろ!!)


「奥義!!!!」


生命の灯火が、大地を空気を震わせる。


ガラナが俺に気づいた。

彼の様子を見た彼女らも俺を見る。

カエハは口元を抑え、泣いている。




ガラナは両手を振り上げ、歓喜する。

「最高だよ! お前は!!」


「死の間際にこれ程までの精神力を爆発させるとは!!」


「感じるぞ! お前の生命いのちを!!」

「美しい!!」

「命燃ゆる今、この瞬間! お前は今生で一番輝いている!!」


「俺も、応えよう。」

「お前の最期に!!」


ガラナは3人をみて告げる。

「アスタを残酷に殺す。」

「次は貴様ら3匹を残虐に殺してやる!」



「来い! アスタ!」

「残酷かつ残虐に殺してやる!!!」


両足に力を込め、一気に開放しガラナに突撃する。


「奥義! 終の剣!」


「拳術! 残無の生命いのち!」



ガラナの左肩に刃を振る。

能力 怪力を乗せる。


左肩を断てた!


右目に拳を受けるが、構わず突進する......


剣を握る方の右肩に彼の拳が貫通した。

血が吹き出す。



「ガラナ!! お前、元は冒険者だったんだろ!?」

彼の眉間が動いた。


「花言葉は"情熱"だ!」


彼は叫ぶ、左肩から腹にかけて、大きく割かれている。

「何がだ!?」



俺は後方に飛び去り、左肩に剣を構える。


「ガラナの花言葉だ!!!」


右肩に向け、剣を振り下ろす。


「拳術 "酷虐"!」


「終の剣 "終命"!!」


青い炎が天上まで轟音を立てて昇る......

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