第18話 アスタ、情熱の鼓動

俺はアスタ チェルス。

木こり兼冒険者だ。


昨夜、ミサから新たな依頼を受けた。

今、俺は........


とんでもなく困っている。


「アスタさん! あんなわがまま女なんて放っておいて私達と冒険しよーよ??」


彼女はケーネ ラングラー 

巷で有名な女性冒険者だ。


天賦の才能で一躍人気になった。


「私と一緒の方が楽しめるよ?」


彼女は大きく実った胸を見せながら、言う。

「何故? あの女と一緒なの?」


俺はいい加減、堪忍袋の緒が切れ、叫ぶ。


「んな事どうでもいいだろ!!」

「今は、魔物に集中しろ!」


そう。いま俺達は魔物の巣窟に来ている。

俺は一人魔物達に剣を振るっている。

女性3人は遠くから、その光景を見つめている。




「えぇー。じゃあ、パーティに入ってくれるなら、手伝う」


「入らねぇっての!!」




なんとか、敵の波状攻撃を受け切った。

手帳を確認する。

18と血でレベルが表されている。


詠唱を終えた魔法少女が近づいてくる。

彼女もまた、美少女で多方面から人気を得ている。

「アスター。 私疲れたからおぶってー。」

「はぁ?」

「うーん。まぁ、いいやー。」



「ミイノ。駄目ですよ。」

「アスタ様は疲れていらっしゃるのですから.....」

特殊すぎるこのパーティにも癒し枠はある。

唯一、まともなお嬢様であるカエハ イベルシュタイン。


彼女は俺に申し訳無さそうに微笑む。

正直、性格と容姿だけで惚れてしまいそうになる。

「すみません。 私は能力を持っていないので足手まといですよね......」


「いやいや、カエハがいねぇと、コイツら暴走し続けるだろ?」

「お前のやってることは立派だよ。」



なんだか、後ろから誰かに尾行されている気がする。

「何鼻の下伸ばしてんのよー!」

草むらから声がきこえ、反射的にその名を口にする。

「マリア?」


3人が俺を怪訝な目で見る。


「マリアって、あの女でしょ? 私の方が絶対いいよ!!」

ケーネが近寄り、胸を強調してくる。

「あの女、胸ないじゃない!」


草むらが揺れた。


ミイノは俺を見て笑いながら言う。

「もしかしてー。アスタは、マリアの事が好きなのかー?」


「んな訳ねぇだろ。」

「ただの腐れ縁って奴だよ。」

ミイノはニヤニヤしている。


「マジだぞ。 第一アイツには.....」

レイモンドがいると言いたかった。

が、その言葉は出てこなかった。

最愛の人を我が手に掛けた彼女の気持ちは、想像の範疇を超えている。


「アスタ様は.....何故、冒険者に?」

カエハが指を弄りながら質問した。



「さぁ? 特に考えた事もねぇな。」

笑いながら

「マリアに振り回されてばっかだしな。」


「んでも、夢ならある。」

「誰にも譲れない夢だ。」









巣窟を出ると、だだっ広い平原に出た。


「ここなら私の能力使えるね。」

ケーネは胸に手を当て、目を閉じる。


ミイノが魔法の杖を振り上げ、抑揚のない声で言う。

「集まってらっしゃーい。」

「魔物達ー。」


ケーネの能力は濃艶 

文字通り、容姿を活かした能力で人や魔物達を魅力する。


ケーネは目を開け、叫ぶ。

「ヤバい奴引いちゃったぁ!!!」



「一体、何を......」

俺の言葉は、大きな爆発音に制された。





「女3匹に男1匹か.....」

「少しぐらいなら腹を満たせる」


邪悪な声は土煙の中から聞こえた。


煙が晴れ、次第にそのシルエットが鮮明になる。


「冒険者ども、俺が残酷かつ残虐に殺してやる」

そいつは舌を出し、拳を構えた。







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