第17話 姫、仲間の生還。

「よくやったね。」

遠くからミサの声が聞こえた。

「ミレーナ。君がキングの居場所を暴いた。」

「!」

目を開けると、マリア、アスタ、イザベラにミサが私の顔を覗き込んでいる。


私はアスタに抱きつく。

「ちょ、ミレーナ!?」

彼は驚き、声を上ずらせる。


「思い出した! にゃたしと最初に仲良くしてくれたヒト!」

「アスタ!!」



ーーー

ミレーナはミサに問う。

「どうして、にゃたしの居た場所がわかったのにゃ?」


彼女は言う

「キングの負の感情が、あの空間から放出されていたからだよ。」

「怨 憎 苦、物凄いエネルギーだった」


私はミレーナに言う。

「ミサったら、ホントに無茶したんだよ!」


ミレーナに説明する。




「はぁ? ミサを殺す?」

「俺が!?」

アスタは彼女の言葉に驚く。


「うん。 あの空間は死んだ者しか行けない。」

「だから、私を疑似的に死亡させてくれ。」


彼女はイザベラを見る

「そうだね。」

「脈が止まって、30秒経過したら、胸の真ん中に雷の矢を射て。」

「そうすれば、蘇生して意識が戻ると思う。」

イザベラは決意する。

「わかった。」



「よし、アスタさっぱり殺ってくれ。」

「あんまし、痛いのはやだぞ?」



ーーー

「まぁ、そんなこんなで、ミレーナの手を掴み、意識を戻して貰うと、君もこの世界に戻って来れた、と言う訳さ」


ミレーナは首を横にふる。

「さっぱりわかんないにゃ。」


イザベラはミサに問う。

「ミサ。あんた一体何者だ?」

「あの状況で、自死の決断をするなんて、常人には出来ないぞ。」


彼女は笑って答える

「言ってなかったっけ?」


「私の能力は"冥魂"」

「個性は"守人"」


「魔術師をしながら冥府の番人もしている、スゴイ人さ。」



彼女は両肩を少し上げ苦笑する。

「とは言っても、自分の死を操れる訳ではない。」

「だから、例の空間に行くときには誰かに殺して貰わないとね」


私は聞く

「どんな事が他にできるの?」


「例えば、死んだ仲間をさっきみたいに、あの空間から連れ戻すとか......そんな程度」


「でも、誰も彼も生き返らせる訳には行かない。」

「死者と生者の選択。」


「ホントに精神がおかしくなりそうだよ」


頭を下げるミサにミレーナは尋ねる。

「何故、にゃたしを助けたのにゃ?」


「私が依頼主だからね。」

「あと、彼女について行くと君は死後、怨霊となる可能性があった。」


「怨霊は中々除霊出来ないんだよ」

舌を少し出して、はにかむ。

「番人的には仕事を増やして欲しくないんだよね。」



私は腕を組み、アスタに言う

「全ては金に目が眩んだアスタ悪いのよ!」

「はぁ!?」


「金貨一枚だぞ!?」

イザベラは口を挟む。

「それでも仲間の危険を顧みない.....いや、そもそも勝手に依頼を受けるなよ」

「確かに、そうだけどよ。」


彼は私達の方を向き、反論する。

「マリアもイザベラも依頼受けてこねぇよな?」


私は言う

「私は暖かいお布団でずっと寝ていたいの!」

「.......家賃どうすんだよ? あと、イザベラの俸給は?」

「それは......アスタが何とかしてくれる!」


「絶対、馬鹿だろお前。」

「馬鹿じゃないもん!!」


「イザベラもそこまで積極的じゃねぇし、マリアは馬鹿だし....」

馬鹿じゃない!と口を挟む。


「ミレーナは.....変な物持ち帰ってくるし。」

「えっへん。 高そうな物を拾ってるのにゃ!」

「全然売れねぇんだよ!!!」

「銅貨一枚にも交換してもらえねぇんだよ!!」



完全に空気と化しているミサがアスタに言う。

「仕事紹介しようか?」

「ああ!!」


皆、黙り彼女の言葉を待つ。

「次はね、あるパーティから依頼が来ている。」


「アスタ、君一人でそのパーティの即戦力として魔物退治に付き合って欲しいんだって。」


「報酬は?」


「働き次第だね。」

ガッツポーズを決める。

「っしゃあ! やってやろうじゃねぇか!」


私はイザベラと声を細め話す。

「アイツも相当馬鹿よね。」

「ああ、普通は怪しむぞ。」

「何故、アスタが指名されてるの?」


「そこだよ。」

「必ず裏がある。 明日以降、アスタを尾行するぞ。」



アスタは私達をよそに、ミサから渡された書類を書いていた。







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