第14話 姫、霊魂信じぬ

レイモンドの死から三週間が経過した。

私はまだ気持ちの整理や、彼への未練がついておらず、枕を濡らす日が続いている。


今朝もベットの中でうずくまっていると、アスタが毛布を取りにきた。


彼は目を輝かせて言う。

「ミサから新しい依頼を貰ってきたぞ!」

「次の報酬は金貨一枚だそうだ!」


彼はミサとの出会い以降、割のいい仕事を紹介して貰い、日銭を稼いでいた。


「バーで女装して一日過ごした時なんかもあったが、金貨一枚のこの日の為だと思うと、何ともねぇ!」


私は鼻を啜りながら言う。

「ミサって何者なのよ」

ここまで私達に良くしてくれる理由が思い当たらない。



イザベラがドアを開け、入ってくる。

「その事なら、ミレーナに頼んで調査して貰った。」


横にいるミレーナは報告する。

「奴は確かにナセルホルンから来た、魔術師にゃ。」

しかし、次は何か恐れている様な声色で

「でも、夜な夜なシャトラスから二時間程歩いた所にある、"彷徨さまよいの森"に行っているのにゃ」


アスタは口を挟む

「あの、一度入ったら戻れないって云う森か」

彼の言葉に寒気が走る。

「怖い!」

「森で彷徨い、死んだ霊でさえも森からは出られないらしいな。」


アスタのとんでも発言に私は腕を組み大声で言う。

「アスタって幽霊とか信じちゃってる感じのカワイイ男の子??」

「いるわけ無いじゃない! 幽霊なんて存在!」


3人は冷たい視線を送る。

「いや、居るぞ。幽霊」

負けじと躍起になる。

「いない!」

「いる」

「いないの!!!」


いる、いないのやり取りが5分程続き、痺れを切らした私は3人に宣言する。

「じゃあ、今夜"彷徨いの森"に行こう。」


アスタはニヤリと笑う。

「よし来た。ミサからの依頼はまさに、彷徨いの森で、彷徨い続ける霊たちを束ねるボス。」

「ゴーストキングの退治だ!」


「いやぁああああ!!!」

「行きたくないにゃあああ!」

「幽霊怖い!!」

ミレーナは耳を抑え、叫んでいる。


(ゆ、幽霊なんているわけ無いじゃない!)

(非、科学的って奴よ!)



夜、私達は彷徨いの森に来ていた。

入口にはミサがおり、注意を呼びかける。

「これから先は複雑に入り組んだ森の中だから、この紐を、皆腰に着けて四人一列で進む事。」

加えて言う

「彷徨う霊魂はあらかた除霊しておいたけど、それは入口周辺の奴らだ。」

「キングに近づくほど、奴らの力も強くなっていく。」


ミレーナはずっと震えている。

ミサは私達に手帳を渡すように言う

「うーん。ギリギリだねー。」


ギリギリとはなんだろう。 彼女は私の問いに答える。


「ここいる魔物の力と君達、一人ひとりの力が拮抗してるってこと。」


「力って言うのは、私達冒険者の中では"レベル"って言われている。」

「そのレベルは魔物を倒すと上がっていく仕組み。」

「ここみて。」

そう言われ、私の手帳を広げる。

「マリアちゃんの血で、10って書いてあるでしょ。」


「これが、君の今の力」



アスタは12 イザベラは15  ミレーナは11だった


「なんで、私が一番低いのよーー!!!」

森の中に私の絶叫が広がった。


「にゃはは。 にゃたしの方が高い!」

「1しか違わないじゃない!!」


手帳を見てアスタは呟く。

「流石に魔物の討伐数が、そのまま影響してくるな。」

「マリアは一匹も倒した事ねぇのに、何故10もあるんだ?」

「私だって、指揮官能力で皆をサポートしてるじゃない!」

「レベル20くらいあっても、おかしくないわよ!」


ミサは苦笑いしながら呟く。

「冒険者は皆、レベル10から始まるんだよね」




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