第10話 姫、異世界の謎

小鳥の囀りで目が覚めた。

(首痛い....)

横には、イザベラとミレーナが寝息を立てて、気持ち良さそうに眠っている。


首筋を擦りながらベットから起き上がると、昨日のパーティにいた女性が、備え付けの椅子に座っていた。


「起きた? 昨日は手荒くしてしまってごめんね。」

「....?」

状況が理解できない私に彼女は説明してくれた。


「私の名前は、"ミサ ドールネンス"」

「昨日の3人をまとめるリーダーさ。」



「私達のパーティは王都"ナセルホルン"から派遣されたんだ。」

「シャトラスの郊外で、魔物達の王である"魔王"の部下が出没していると聞いて、調査に当たっていた。」


「昨日のスライムの集団には、赤色のスライムが混じっていた。」

「そいつは、君達の様な駆け出しパーティには相手にならない程強い」


「スライムの習性として、活発に生命維持活動をしている者を狙う事が挙げられる。」

彼女は遠くを見つめながら言う

「元気な人間の体内なら、より強い子孫を残せると考えてるんだろうね。」


「まぁ、そんなこんなで、君達を気絶させた後、私達がそいつを倒した。」


「あのまま、私達が起きてたら....殺られてたの...?」

彼女は静かに頷く。

「そんな.....」

ミサは腰から大きな袋をベットに置く。


「君達の報酬だよ。」

「スライムの?」

「そう。 銀貨15枚分。」


その時アスタが部屋に飛び込んできた。

「って! 家賃の半分だけかよ!?」

彼女は冷静に返す。

「まぁ、スライム250匹程度じゃね。」

「はぁ?? 死ぬ思いだったのに....」


ミサは微笑み言う

「私なら報酬の良い仕事教えてやれるよ」





私達一行は、雷鳴轟き暴風吹き荒れるエンパイア山に来ていた。


これも全ては、金に目が眩んだアスタがミサの口車に乗せられたからだ。

私達のレベルじゃ無謀とも言える挑戦だ。


「にゃ! この山って、ガチのマジでヤバいヤツがいるのにゃ!」

ミレーナは猫耳を忙しなく動かし、不安げだ。

イザベラも魔法帽に手をかけながら言う

「噂には聞いた事が、あるが....」


私は聞く

「どんな魔物がいるの?」

ミレーナは声を細めて言う。

「高速で飛び回りながら、見つけた者を永遠に追いかけ.....轟音と共に発射されるナニかで冒険者達を殺す魔物にゃ!」

彼女は目を潤せながら口を開く。

「にゃたし、見た事あるのにゃ。」

「ゴォーゴォーって近づいてきて.....」

「思い出したくないにゃ!!」


(そんなに強くて怖い魔物がいるのね。)


「マリア隊前進よ!!」

アスタは言う

「おい、声でけぇよ! 馬鹿!」

「馬鹿じゃないもん!」




入山すると直ぐにゴブリンが数体現れた。

ミレーナの能力"偵察"のお陰で、付近にいる魔物の居場所は掴んでいる。

「こいつ等なら俺一人で充分だ。」

アスタはそう言うとミレーナが伝えた場所に飛び込んで行き、手当り次第倒して行った。



「イザベラ、大量だけど詠唱頼む。」

「はぁー。 はいはい。」

彼女は溜め息をつく。

序盤であるこの場所で彼女の体力を使う訳にはいかない。

主目的である魔物との戦闘まで温存する方針で固まっている。


「ゴブリン達、こんな物を溜め込んでいたのにゃ!」

ミレーナが両腕一杯に戦利品を持ってくる。

第二の能力"強奪"だ。 この世界では2つ以上の能力を持つものは珍しいと聞く。


「これなんだ?」

アスタが一つの小さな空の鉄の筒を見つけた。

「鉄? なのか?」

「んにしても小さいな。」


(何処かで見た事がある気がする....)

(いや、毎日見てた、嫌でも目に入ってきた)


「これって、弾丸の薬莢やっきょう.....」


詠唱を終え、ゴブリン達を冥界へと送ったイザベラが返ってきた。


「マリア、ダンガンとはなんだ?」


みなが私に注目する。


(なぜ、この世界に? 銃すらないこの世界に.......?)









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