第8話 姫、魔物討伐。リベンジ。

ミレーナの力を見るべく、私達は昨日の平原に向かった。


「あっ、止まって!」

彼女が目を細め、アスタに指示した。

「?」


遠くを指差し。

「あの木の側にスライムが一匹いるにゃ!」

「え!?」

彼女が示している林は此処から、目測でも500メートルは離れている。

(見えるの!? 凄い!)


「あの木だな?」

イザベラが確認する。

「うん。 にゃたしの能力は"偵察"と"強奪"。」

「偵察能力なら誰にも負けにゃい!」


イザベラは弓に矢を掛け、一点を見つめる。


「"冷徹な瞳"に炎の矢。これで....」


私は気づく

「イザベラ! 今、炎を使ったら林が焼けちゃう!」

彼女は此方を見、溜め息をつきながら弦を緩める。

「ならマリアどうする? 孤立しているあのスライムをどう倒す?」


私は林を睨む。


「っ!」

(まただ...指揮官能力が)

頭に電流が流れる。

突如頭を抑えた私を3人はそれぞれ声をかける。


(聞こえないよ...。皆何言ってるの....?)

映像が流れる。

幾つもの映像が。

あの魔物を倒すそれが何パターンも頭を過る。


ーーー

接近し、アスタが仕留めイザベラが詠唱する映像だ。

林から大量のスライムが現れ、彼らを飲み込んだ。

(これじゃない!)


ーーー

イザベラが弓を放つが、林が全焼し、灰の匂いに集まったスライムの集団に荷車を囲まれ、四人全員が餌食となった。

(これも違う!)


ーーー

.......


(これだ!)


私はイザベラに指示を出す。

「イザベラ。 林の手前に雷の矢を撃って!」

「それはいいが、マリア大丈夫か? 頭は痛むか?」

「ううん。 大丈夫!」

「よし。」


キリキリと弦が張る音が聞こえる。


「ミレーナとアスタはイザベラが詠唱する近くで待機!」

「貴女は林の中のスライム達の動きをアスタに伝えて!」

「アスタはイザベラに近寄るスライムの注意を引いて!」


彼女とアスタは互いを、見る。

「はぁ!? 何で俺がコイツと?」

「にゃたしも嫌! 何されるかわかんない!」

「なんもしねぇよ!」


「アスタ...お願い!」

満面の笑みで彼に言った。

アスタは顔を赤くしている。

(忘れられてるかもだけど、私って美少女だから男の子に対するお願いなら滅法強いのよね)


「し、しょうがねぇ。 組んでやるよ。」

「ん、」

アスタは彼女に右手を差し出す。

ミレーナは、きょとんとしていたが、差し出された右手を握り返す。


「っしゃあ! 行くぞ!」

背中に斜め掛けしている剣を引き抜き、走っていく。


「男は単純な生物だな。」

イザベラは呆れた声色だ。


「ふんっ!」

彼女から離れた矢は弧を描き地面に刺さり、天から雷が降ってくる。


矢を見たスライムはいぶかしげにそれに近づくが、上から2本目が降ってくる。


「本命の炎の矢だ。」


そう。彼女は2本の矢を同時に射出した。

時間差で2本目の矢がスライムに刺さり、その身体を紅蓮の炎で焦がす。

「この方法なら体力を温存できる。」

「まぁ、魔法とは関係無しに弓の技術を要求されるが」



彼女は動かなくなったスライムに近寄り、呪文を唱える。


ミレーナは林の中を凝視している。


アスタは何処かに行ってしまった。


イザベラが詠唱を終えるとスライムは消えていた。

「これで3匹目。 あと2匹だ。」



何処からか雄叫びが聞こえる。

「うおおおおおお!!!!」

ミレーナが猫耳を声のする方へ向ける。

「きゃあああああ!!!」


遠くからアスタが走ってくる。

その後ろには......スライムの大群が彼を追って来ている。


私はあらん限りの声を上げる。

「ミレーナ! イザベラ! 荷車まで逃げてーー!!」


ミレーナは大群を見て腰が抜けているのか、座り込んだままだ。


イザベラは先に戻ってきた。


ミレーナは泣き出した。

アスタは彼女に駆け寄り、担ぐ。

そして、荷車には来ず、明後日の方角へ走り出した。


私は力なく声をだす。

「どうしよ .....アスタ、死ぬ気なの?」


イザベラは私の肩を叩く。

「ちがう。」

「彼は私達に賭けているんだ。」


「マリア セントバーグ。」


弓を構え、彼女は声を張り上げる。

「彼らを助ける為の指揮を!」





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