第7話 姫、猫耳エルフとの遭遇

朝。冷気が私を目覚めさせる。

昨晩のイザベラとの会話を思い出す。



ーーーー

部屋に荷物を置き、遅い夕食を食べる

彼女はなんとか回復し、自身に関して話した。

「私は魔術師になりたいんだ。」

「魔法使いと、どう違うの?」

「一般的な魔法使いに対して完全な上位互換な存在だ。」


彼女は俯きながら呟く。

「私には体力がない。だから魔法を打てる回数も少ない。加えて属性が、炎と雷だけ。」

「魔術師に成れれば、私を馬鹿にしてた村の奴らを見返せられる。」

イザベラは私を見る。

「こんな私だけど。仲間にしてくれてありがとう。」


彼女は色んな話しをしてくれた。

生まれ故郷の事やこの世界の成り立ち、魔物達についても。

「私の個性は"冷徹な瞳"だ。 弓魔法なら百発百中なんだ。」

「まあ、2発が限界だけどな。」

彼女は自虐気味に言った。




陽光が、身体の隅々まで細胞を活性化させる。

アスタが見当たらない。

(まぁいいや。ご飯ご飯......。)

イザベラはまだ寝ている。


階下には様々な音が響いている。

人の声や、食器とカトラリーが織り成す独特の金属音。

これまで気づかなかったが、部屋の下にあるギルドでは長テーブルは食事場としても活用されているのか。

普段は街の子供達が勉強に使ったり、他の冒険者達が集まり会話し合う、そんな施設だ。



「あ、マリアおはよう。」

アスタが先に席に着いていた。

(ん? 誰あの娘??)

彼の横には、小柄で猫耳な女性が縄で縛られていた。


「おはよう。その娘だれ?」

「俺達の金を盗もうとしたエルフだ。」

「えるふ?」

「人間の一種だな。 魔物に近い人種のこと」

「ふ〜ん。」


アスタは事の顛末を説明する。

「俺達が寝た後、コイツが部屋に入ってきたんだ。 物音が聞こえたから飛び起きた。 したら、金を入れてた袋を持ったコイツがいたわけ。」

それから夜通し、シャトラスの街中で追いかけっこが始まったらしい。


一通り話し終えたアスタの横で、少女は声を上げる。

「にゃたしの名前は"コイツ"じゃにゃーーい!」

「ミレーナ! にゃたしの名前!」

「わかった?」

彼女は私達を交互に睨む。


「窃盗犯の名前なんかどうでもいいよ。」

イザベラが私の横に立っていた。

「あんたのせいで私の俸給が無くなる所だったんだ。 きっちり落とし前はつけてもらうよ」

イザベラはミレーナと名乗るエルフを睨む。

彼女は負けじとイザベラと張り合う。


アスタは彼女に声をかける。

「おっ、元気になったか?」

「うん。ありがとう。心配かけてすまない。」

「大丈夫。 俺の方こそ魔法に頼り過ぎた。 負担かけて悪かったな。」

彼らの話しは続いた。



(私、全然会話に参加してないじゃない! 私がリーダーなのにぃ!)

「ちょっと!私も混ぜてよ!」

3人の冷たい視線が刺さる。

「マリア。やっぱお前馬鹿だろ。」

「馬鹿じゃないもん!」


彼女は茶化す。

「にゃははは。仲間割れ? 3人とも大バカだねー。」

「コイツ、警察につきだしてくるわ。覚悟しろよ。」

アスタはそう言い放った。

彼女の顔が真っ青になる。

「いや、いや! それはダメ!」

「なんでだよ?」

「これ以上、奴らの厄介になったら、この街に居られなくにゃっちゃう.....」

「前科あるのかよ…お前」

(この娘馬鹿ね! 私の方が賢いかも!)



「あっ、そうにゃ! にゃたしがパーティメンバーに加わるって事でチャラにしてくれにゃい?」

「は?」

彼女の提案に全員が凍りつく。

イザベラと顔を見合わす。

「え?」


彼女はふふん。と鼻を鳴らす。

「にゃたしがパーティに入れば4人ににゃる。そうすれば、ギルドから正式にパーティとして登録してもらえる。」

「そ、れ、に!」

「昨日、スライムの大群に襲われたって聞いたのにゃ。 にゃたしが入ればもう襲われにゃい!」

自身満々に言う彼女にアスタが問う。

「根拠は?」

「......えっと.....」


「生憎、うちには馬鹿要員がもういるんだ。これ以上はいらない。」

彼は私を一瞥する。

「何よー! 馬鹿じゃないもん!」

「このパーティのリーダーは私よ!」


(なんでアスタがリーダーっぽい事してるのよ!)

心の中で愚痴る。

(でも、あの娘が入れば、アスタに馬鹿って言われずに済むかも!)


アスタは猫耳少女を担いで席を立つ。

「ちょっと待つにゃ! 話せばわかるー!」

「わかんねぇよ」

「あっ、賃金はいらにゃい! ご飯くれるだけでタダ働きするから!」


「だから許して!!」



彼女の声がギルド内に響く。

人々が私達を見る。

私は決めた。


「マリア セントバーグが命じる。」


「ミレーナを我が隊に推薦するわ!」









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