第5話 姫、初魔物退治

魔法使いイザベラを仲間に加え、一夜を過ごした。

翌朝、ギルドに行き魔物退治の依頼を受けた。

内容は、街から少し歩いた場所にある平原で、"スライム"なる物を5匹討伐せよ。との依頼だった。


アスタに荷車を引かせ、私とイザベラは話している。

「スライムってどんな魔物なの?」

「ジェルの様な身体を持つ生き物だ。...あと、丸っこい」

「へぇ〜。 じゃあ直ぐ退治して、報酬金貰っちゃおう!」


「スライムを舐めるなよ。マリア」

アスタが口を挟んだ。 

「何よ! 弱そうな魔物じゃない。」

「基本的にはな。 だけど、アイツら俺達人間に纏わりついてくるんだよ。」

「振り払えばいいじゃない。」

「無理だ。奴らは、纏わりついた生物の穴という穴に子孫を残すため、自分の細胞を注入してきやがる。」

イザベラは言う

「そして、その人間は内側から破裂して死ぬ。 後に残るのはスライムの子供達だけだ。」

顔が引きつる。

「最悪.........」

「あの平原は、俺達みたいな駆け出し冒険者が最初に向かう場所だ。 そこにいるスライムは、殆どが人間から産まれた奴らだ」

「聞くんじゃなかった......。」


「赤色のスライムには近づくな。見つけたら直ぐ逃げろ。 シャトラスに伝わる言葉だ。」

イザベラは遠くを見つめながらポツリと言った。


生唾を飲み込む。

ここで死んでしまったら夢が叶えられない。 

なんとしても生きて帰らなければ! 



我らは平原についた。

3人でスライムを探す。

アスタが東を指差し私達に伝える。

「居たぞ。 あそこに一匹だ。」

「よし、私に任せろ。」

イザベラはそう言うと荷台から弓を取り出す。

その弓を見て思わず質問する。

「イザベラ!あなたって魔法使いじゃないの? なんで弓なんか…?」

「? 魔法使いを何だと思っているんだ?」

御伽話の絵本を思い出し言う。

「杖を使って......」

「まぁ、杖を使う奴もいるな。」

「でも、私は弓を使って魔法を出す。」


彼女は弦を力一杯引く。

スライムに狙いを定める。


放たれた矢は弧を描きながら高速で対象に向かい飛んでいく。

グサッと矢はスライムに刺さり、青い身体が黒焦げになった。


「これが、私の魔法。 雷の矢って名前かな。」

「凄い...。」

「どうも。 まだ、倒せてないよ。」

「なんで? もう動いてないよ?」

アスタが説明する

「魔物は完全に消滅するまでは生きている。 人間の死と奴らの死は概念的に違う」

「そこで、私みたいな魔法使いが必要ってわけ。 あんたらには出来ない事があるんだ。」


彼女は私達を連れてスライムに近づき、呪文を唱える。

すると、スライムの身体はみるみる崩れていき、終には跡形もなく消え去った。

「一匹討伐完了。 あと4匹、さっさと倒して帰ろうか。」

彼女はそう言いながら私達をみる。

しかし、その目はせわしなく周りを見ていた

私は振り返る。


「なにこれ、どういうこと....」

大量のスライムが、私達を囲んでいた。

ジリジリと彼らは近づいてくる。 

集団で行動が出来る程の知能を持ち併せているとは思えないが、それでも意思疎通しているかのような連携だ。


アスタは今日買ったばかりの剣を背中から抜く。

「やべぇな。」

「アスタ! 剣なんかで戦うな! 斬れないぞ!」

「わかってらぁ! んでも、この状況は…誰かが犠牲にならねぇと全滅だぞ!?」

私は彼を見て言う。

「アスタ死んじゃやだよ! あんたが死んだら誰が私にご飯恵んでくれるのよ!」

「おい! 昨日、俺の晩飯盗み食いしたのお前だったのか!?」


死を覚悟した瞬間、私の脳内に電流が走った。

二人は言い争っているが、全く聞こえてこない。

何故か己の目と思考が冴えていく。

天啓、そう言うしかないと思う。

この状況で3人が生還する方法を見つけた。

(もしかして......これなら!)


「二人とも、私の言うことを聞いて!」

彼らは黙って私の方を見る。



「生きてシャトラスに戻るよ!」







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