第4話 姫、魔法使いを求む

街に着き、一夜が開けた。

この街は"シャトラス"と言う名前だそうだ。

街の中心は、様々な人が往来している。

アスタが言うには、魔物退治には危険が伴うので、手帳の様な物を発行し、討伐の許可をギルドから得なければならないらしい。

その為、私達は役所に向かった.....。



「ちょっと!どういうことなのよ!?」

私は怒り心頭だ。 

「私の特殊能力が"指揮官"って!」

それだけではない。

「知能低すぎ! "個性 わがまま"って舐めてんの!?」


渡された手帳に自分の血を染み込ませ、人物のステータスなるものが判ると聞き、私ならば、さぞ素晴らしい能力が記されているのだろうと思ったのだが…。

アスタには笑われるし、他の客は蔑んだ目で私を見てくる。


「アスタはどうだったのよ!」

「ん? ほれ。」

と渡された手帳を見る。

知能を除けば殆ど私のと遜色ない。 しかし、力と体力がずば抜けている。

特殊能力 怪力    個性 お目付け役


「なんで私より優れてんのよ!」

「知らねぇよ。」

「お目付け役って誰のよ!」

「マリアのだろ。」

個性と言うよりは性格や、人格の方が正しいと思う。

ステータスという身分が関与しない個人の能力に初めて触れ、私のプライドはズタズタに引き裂かれた。


係員が私に詰め寄る。

「マリア様。夢はお持ちでしょうか?」

「まぁ。持ってるわよ。」

「お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「えっと、平和に暮らす事.....?」

了解いたしました。と言い彼女は去って行った。

夢がステータスに影響あるのだろうか。

そう思い手帳をみる。 


夢  平和に暮らす事


と記載されている。 いつの間に.....。



晴れて冒険者となった私達は早速、魔法使いをスカウトする事にした。


アスタには首から紙をぶら下げさせ、私は笑顔を振りまき魔法使いと覚しき者達に声をかけた。


一人物静かな女性が、雑貨屋にあるイスに座り本を読んでいる。

これまで成果無しで、二人とも疲れ切っている。

なんとか彼女に決めたい......! 

(満面の笑顔を作ってっと)

彼女に歩み寄り

「あの、私達と魔物退治しませんか?」

睨まれた後、発せられた第一声は

「あんたらの手帳見せてくれ。」

だった。


アスタと私の手帳を見せて反応を伺う。

「マリア セントバーグとアスタ チェルス。」

「出身はネーデル村? あぁ、先日モンスターの襲撃を受けた東にある小さな村か。」

彼女は私に視線を向け、質問する。

「マリア。お前の"指揮官"と言う能力は一体?」


興味を持ってくれた。仲間にできるかもしれない!

「まだわからないの......。言葉どうりかな。」

「ふーん。面白いね。」

彼女の反応に頬を緩める。

「金は幾ら払えるんだい?」

「か、金?」

「そう、金。 人を雇うんだ。パーティのリーダーはメンバーに金を払う義務があるだろう? 無賃金労働はしないよ。」

私はアスタを見て、ウィンクをする。

「それなら、この男が払ってくれるわ!」

「なんで俺が!?」

彼女は私達を見つめ、口角を上げる。

「いいよ。 あんたらのパーティに入ってやる。」


「私は、イザベラ ガーデンベルグ。 まぁ、ただの魔法使いだよ。」





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