スキル収集

 この世界に転生し、洞窟に放り出されて一週間が経った。

 召喚物たちの捕らえてきた魔物は悪食のおかげでそのまま食べることができ、水は壁を流れる地下水で賄えた。


 ここで現状の俺の状態だ。この世界でなんと呼んでいるかは知らないが便宜上ステータスとしよう。


〈ユート〉

Lv15

〈召喚術・女帝〉Lv7〈鑑定〉Lv6〈魔力増加〉Lv5〈感知〉Lv4〈夜目〉Lv6〈悪食〉Lv5〈超音波〉Lv2〈粘液射出〉Lv1

〈隠密〉Lv3〈天歩〉Lv1〈剛体〉Lv1〈火炎耐性〉Lv2〈氷結耐性〉Lv2〈聖光耐性〉Lv2〈暗黒耐性〉Lv2〈石化耐性〉Lv2〈痛覚耐性〉Lv2


 魔物を色々食ってたらこんな感じでスキルが手に入った。大半が字面でわかるからありがたい。全く使えないのもあるけどな。


 〈天歩〉は空を歩けるらしい。空の歩き方が分からんから使えないけど。

 〈粘液射出〉は粘液を弾丸のように飛ばすスキルらしい。飛ばせる粘液ないけど。

 〈剛体〉は身体が硬くなる。これは身体強化になるらしい。昨日転んだのだが、傷は付かなかったしあまり痛くなかった。つまり防御系なんだろうな。


 さらに俺自身のレベルも上がって魔力も増えた。だから現状契約している魔物たちは全員召喚しても余裕がある。

 今度は俺の召喚物……いや召喚獣と呼ぼう。それらの紹介だ。

〈レッサースパイドル〉Lv5 ×4

〈レッサーセンチピード〉Lv4 ×3

〈レッサースライム〉Lv5 ×4

〈ドクタニシ〉Lv1 ×1


 これが今の契約して召喚が可能な魔物たちになる。ぶっちゃけ弱い。

 この洞窟で皆を使って俺の食料とかを集めていた関係でレベルが上がっているとしても、弱い。


 そうだ、レベルに関してわかったことがあった。俺のレベルと魔物たちのレベルは言わば経験値の同期となっていると思われる。


 イメージはこうだ。

 レッサーセンチピードが魔物を倒し10の経験値を手に入れたとしたら俺の元にも経験値10が手に入る。

 ドクタニシはドクタニシ自身が倒している訳では無いから経験値が手に入らない。魔物討伐の経験値が俺のみに入っているのだ。


 つまり食料を手に入れれば入れるほど皆のレベルが上がるというウィン・ウィンの関係なのだ。


 後は事後報告になるが拠点を移動した。


 あの蠱毒の壺みたいな崖の割れ目から道を少し戻って通路をさらに下に行った少々開けた場所の壁にある何らかの巨大な魔物の頭骨の中を住処にする事とした。 


 水はこの洞窟の壁にどこからでも手に入るからこの際気にしなくてもいい。

 この拓けた土地、どうやら魔物の通り道になっているみたいで食料集めを兼ねた新たなスキル収集とレベル上げにピッタリだ。


「えっと、レッサースパイドルたちはこの空間に糸を張り巡らせてくれ。レッサーセンチピードたちは戦闘班として待機。レッサースライムたちは糸班たちと協力して罠の設置を」


 作ろうとしているのは彼らの巣を兼ねた罠だ。この空間には入口が四方向にある。

 そのそれぞれに彼らの糸を張って、掛かった魔物を百足たちで仕留める。

 さらに無数の糸を張り巡らせて足場にしたりする。入口の罠を突破された時の第二の罠も兼ねるためだ。


 

 そして一週間の間で戦闘能力とかを調べていた。

 レッサースパイドルは糸と牙、それに含まれる毒だ。タランチュラよりも太く強靭な筋肉による牙は糸に絡んだ魔物相手なら格上でも十分通用する。


 レッサーセンチピードはより戦闘に特化していて、毒は持たないものの、その長い身体と大量の足の爪そして強靭な牙だ。蜘蛛の糸に絡んだ魔物相手なら蜘蛛よりも強い。


 レッサースライムは直接的な攻撃手段は無いものの、蜘蛛の糸にまとわりついて粘性を高めることが出来たり、相手の口などを塞いだり出来る。

 これは言わばコンボ技、前にいた場所でもやっていた戦法だが道が一本で効率が悪いのとかかる獲物も少ない。だからこその引越しだった。


 隠密を使ってこっそり移動していたけど途中遭遇した馬鹿でかい百足にはビビった。

 レーダーのようにとまでは行かないがどうやら気配が感知できるスキル〈感知〉のおかげで事前に隠れたことで幸いバレなかったものの、体長は10mはあるだろうし俺なんか一瞬で食われるだろう……


 そういえば魔物は進化が出来るらしい。ということはもしかして今頑張って作業している彼らもいつかはあんな感じになるのだろうか。だとしたら心強いな。


 まあそんな事を考えつつ蜘蛛たちの罠設置をのんびり見ていると早速罠に獲物が掛かった。

 真っ先に罠が完成した通称一番通路の罠に掛かったのは……お、カエルだ!あれ美味いやつ!

 罠に掛かったのはアマガエルを1m大にまでデカくしたような魔物。味は血だけど食感含めて美味いやつ。


「みんな作業中断!あのカエルを仕留めろ!」


 その号令に従って糸を張っていた蜘蛛たちや岩に張り付いて待機していた百足たちや糸に纏わるスライムが一斉にカエルに飛びかかる。


 戦いは一瞬で終了した。

 最初に糸を移動した無色半透明で粘液体のスライムの身体で口や鼻を覆われて息が出来ず、我がホームと言わんばかりに糸の上を駆けて首に蜘蛛の牙を突き立て肉を裂く。

 素早く糸の上を移動し接近した百足の顎は四肢を引きちぎり、カエルは何も出来ないまま息絶えた。


 どうやら召喚獣間で意思疎通も出来ているようで、蜘蛛たちやスライムたちはもちろん、百足たちも蜘蛛の粘着糸を避けて糸の上を渡ってくる。


 彼らが俺の住む魔物の頭骨にバラバラになったカエルを持ってくる。うっ、思ったよりグロい。


「ありがとう、この足は俺が貰うが、後はみんなで食べて良いぞ」


 俺がもはや慣れた生肉にかぶりつくとジュワーッと肉汁もとい血液が溢れ出る。

 食事は大事だ。スキルが手に入ることもあるし、何より腹が脹れる。

 そしてもう一つ理由が出来た。レベルアップで気づかなかったが、どうやら魔物の肉を食べると僅かにだが魔力が増えるような気がするのだ。

 これは〈魔力増加〉のスキルも含めると今後の投資としてやっておくべきだろう。

 

 だから吸血鬼じゃあるまいしと思いつつも生肉を今日も食らう。

 うん、美味い。




★★★★★★★★★★★★★★★★




「今日までに捕らえた魔物は数十体、レベルアップの効率も上々……だったんだが」


 召喚獣の数は増えてないが皆レベルが9まで上がった。こういうのはだいたいレベル10で進化ってのが相場だ。あと少しだな。


 洞窟に出てから三週間。罠を拵えた空間と俺の家は快適で、日に数体は魔物が掛かる。

 だけど最近レベルアップの速度が遅くなってきた気がする。


 という訳で罠に掛かった魔物を鑑定してみたのだ。


〈レッサーフロッグ〉

ランクF

Lv3

 フロッグ種の最弱種。討伐は容易だが、口から飛ばしてくる毒液は要注意。

 進化の可能性や将来的な危険度は低いが過去に進化を重ね、強力な個体に至ったものもいる。


 なるほど、弱いな。そりゃあレベルアップも遅くなるわけだ。よくもまあ頑張ってLv15まで上げたな。

 でもそうか、ここにいてもそうそうレベルが上がらなくなってきたのか。それは問題だな。


 俺はここがどこかわからない以上、ここの魔物は余裕で蹴散らせるようになってから色々と探索をしたいと考えている。

 だからこそ、この罠で魔物を仕留めて俺自身や召喚獣たちのレベルアップをやってきたわけだ。同時に筋トレで筋肉をつけようともしているけどな。

 筋トレはともかくレベルアップに時間が掛かるなら移動も視野に入れるべきか……


 ここは安全だ。〈隠密〉も使って気配を消せばそうそうバレることは無い。

 現に目の前でこの罠にデカい魔物が掛かっても……ってマジか!?なんだあれ、ヘビ!?20mくらいある?というか、太っ!2mはあるぞ!?


 急ぎ小声で皆に戦闘を禁止させ俺は召喚術を行使する。情報よこせ!


〈ハイドブラックスネーク〉

Cランク

 ザッカラン大迷宮中層に巣を構えるスネーク種の中型魔物。闇に紛れる黒の体色と移動の静かさ故にハイドの名を冠している。鱗は硬く並の剣は通らない。牙は強靭で、猛毒を垂れ流している。攻撃手段は静かに回り込み牙による奇襲である。

 稀に上層付近に現れ食事をする姿が確認される。


 よし、情報記載完了!初めてのCランク魔物か。それにここがどこかも掴めた!ザッカラン大迷宮とな?鑑定!


〈ザッカラン大迷宮〉

 世界六大陸のうち南のグンド大陸の地下ほとんどを覆う超巨大迷宮。世界にある四大迷宮の一つであり最大級。未だ全貌が掴めていない。そんな巨大さでありながら入口はわずか五つと少ない。


 嘘だろ……大陸規模の大迷宮。ほぼ脱出不可能か?

 ここにハイドブラックスネークが居るってことはここは中層か上層だ。ここの拠点を構えるのに少し下ってきたからあそこはまだ上層だったのだろう。


 しかも上層だとしても出入口はわずか五つ。ここがどこかもわからないのに見つけられるわけないだろ。

 でもここが誰も知らない秘境の洞窟って可能性が無くなっただけマシか。


 よし、後で諸々の情報集めだ。まずは……このヘビだな。


 戦闘を禁止したが、ヘビが暴れて巣は破壊されているため蜘蛛たちが修復を行うと同時に勝手に拘束の糸を強めている。

 ぐるぐる巻きだが一応最弱種レッサースパイドルの糸だ。簡単に切れるって訳でもないが、あの図体なら余裕のはず。


 でもそこまで切れてないあたりどうやら図体はデカいが力はそこまででも無いらしい。

 暗殺者みたいな狩りをするからだろうな。レッサースパイドルの糸も通用するなら……


「やってみるか。───レッサースライムたちは拘束をレッサースパイドルたちに任せて鼻と口を塞げ。レッサースパイドルは口を閉じさせるように拘束。レッサーセンチピードたちは奴の目を狙え。柔らかい箇所の攻撃だ」


 あー、歯がゆい。俺も魔法とか使えたら加勢出来るのに。こう……水鉄砲!みたいな。

 だけど俺は召喚士だ。頑張る彼らを信用しよう。


 さあ、ハイドブラックスネークの瀕死化作戦の開始だ!




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次回更新は12/3 12:00です

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